検査には、不妊の原因を探るための基本的な検査である「一般不妊検査」と、さらに詳しく調べる必要がある場合に行われる「特殊不妊検査」の2つに分けられます。
女性の一般不妊検査は、月経周期に合わせて系統的に実施されるため、すべてを終了させるには最低でも2カ月くらいは必要です。場合によっては、全検査の終了を待たずに、不妊治療を開始することもあります。
女性の検査
【女性の一般不妊検査】
超音波検査 | 超音波断層装置の経膣プロープを膣の中に入れたり、経腹プロープをお腹に当てたりして、骨盤内の様子をモニター画像に映し出す検査です。これにより、子宮や卵巣の状態を観察したり、卵胞の発育具合を見たりすることができます。また、子宮や卵巣の状態から、子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣腫瘍などの疾患についても診断できます。 | |
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ホルモン検査 | 黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)、卵胞ホルモン(エストロゲン)などの値を、採血により測定します。 | |
子宮卵管造影検査 | 頸管から子宮腔へカテーテルを入れて造影剤を注入し、X線撮影を行う検査です。この検査により、子宮内腔の形態や卵管の通過性、卵管采周囲の癒着などがわかります。造影剤が卵管の途中で留まってしまう場合は、癒着などによる卵管の閉塞が考えられます。人によっては痛みを伴います。 | |
頚管粘液検査 | 頸管粘液の量、透明性、粘調度、シダ状結晶(乾燥させたときに見えるシダの葉のような結晶)の形状、牽糸性(伸び具合)などを調べます。 |
【女性の特殊不妊検査】
腹腔鏡検査 | 腹腔(骨盤腔)内、とくに卵管・卵巣周辺部の病変の有無や程度を正確に把握するために行われる検査です。検査時には臍やその周囲を1cmほど切開して内視鏡を挿入し、下腹部も1~2か所小さく切開して操作用鉗子を入れ、モニター画面によって腹腔内を観察します。簡単な癒着などはその場で手術することも可能です。全身麻酔を必要とし、通常、3日間程度は入院します。 | |
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子宮鏡検査 | 内視鏡を頸管から子宮腔内に挿入し、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどをチェックします。子宮内腔の形態異常や癒着の様子などもわかり、軽い癒着をはがしたりポリープを切除したりすることもできます。最近は一般不妊検査に組み込まれることも増えてきています。 | |
卵管鏡検査 | 卵管の閉鎖など、その通過性が思わしくない場合に、子宮卵管開口部から卵管内へと内視鏡を挿入して行う検査です。卵管内の状態を確認するほか、軽い癒着なら剥離することもできます。ただ、卵管の外側が周囲と癒着している場合は治療できないため、腹腔鏡を併用して検査を行うこともあります。 | |
染色体検査 | 生殖能力と関係した染色体に異常があると、卵巣の発育が悪くなったり、流産の原因となったりします。このため、採血をして血液中のリンパ球を培養し、染色体の数や構造に異常がないかどうかを調べます。 | |
抗ミュラー管ホルモン (AMH)検査 | 抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、発育過程の卵胞から分泌されるホルモンで、卵巣予備能(卵巣年齢)を推定することができます。卵巣予備能がわかることで、今後の治療法やステップアップを選択する指標となるとされています。通常のホルモン検査と同様に血液検査で測定が可能ですが、まだ新しい検査法であり、保険適用はされていません。 |
男性の検査
【男性の一般不妊検査】
視触診 | 精巣(睾丸)や精巣上体の大きさや硬さ、精索静脈瘤の有無などを診察します。 | |
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超音波検査 | 陰嚢部の超音波検査による、精巣容積、精巣の性状(精巣腫瘍の有無など)、精索静脈瘤の有無などを調べます。 | |
精液検査 | 4~5日間の禁欲期間の後、採取した精液から、精液量、精子濃度、運動率、正常形態率(または奇形率)、生存率、白血球数などについて調べます。 精液の状態は体調などにも左右されるため、結果が悪ければ再検査します。 | |
ホルモン検査 | 男性ホルモン(テストステロン)や性腺刺激ホルモン(LH、FSH)、プロラクチンなどの血中値を測定します。 |
【男性の特殊不妊検査】
精巣生検 | 精巣(睾丸)や精巣上体の大きさや硬さ、精索静脈瘤の有無などを診察します。 | |
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精管精のう造影検査 | 精管の閉塞の有無を調べる検査です。陰嚢を少し切開し、造影剤を注入してX線撮影します。 | |
染色体検査 | 染色体の異常が、不妊の原因となる場合があります。「クラインフェルター症候群」も染色体異常の1つで、X染色体が過剰にあることが原因で精巣の発達や男性ホルモンの分泌が損なわれ、無精子症の原因ともなります。こうした染色体の異常をチェックするため、採血して血液中のリンパ球を培養し、染色体の数や構造を調べます。 | |
精子進入検査 | 精子の受精能力をより正確に調べるための検査です。透明帯を取り除いたハムスターの卵とヒトの精子をシャーレの中で一緒にし(「媒精」という)、卵子の中に進入した精子の率を調べます。ハムスターテストともいわれます。 |
その他
フーナー(ヒューナー)テスト(性交後試験) | 早朝、性交した後に、頸管粘液中で精子が元気に運動していることを確認する検査です。男性不妊、頸管粘液分泌不全、免疫性不妊(抗精子抗体が陽性の場合)などの場合に不良となります。 | |
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抗精子抗体検査 | フーナーテストにより抗精子抗体の存在が疑われる場合、採血によって調べます。 |
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AIDを選択する前に知っておいていただきたいこと ①「妊娠・子どもの誕生」は、人生のゴールではありません。家族の始まりであり、子どもの人生のスタートです 思いもかけない「不妊」という現実の中、「妊娠・子どもの誕生」が、おふたりの人生のゴールになっていませんか?「どうしても子どもが欲しい」と願うおふたりにとって、そう感じられることは仕方のないことかもしれません。しかし、妊娠・出産さえすれば、何もかもが上手くいき、人生がハピーエンドで終わるわけではありません。そこから子育てが始まりますし、生まれた子どもにとっては、まさしく人生がスタートします。子どもが幼児に成長し、小学生、中学生、やがて青年になって、大人になり、仕事を持ち、結婚をするかもしれないし、子どもを持つかもしれません。そしてやがて老いていきます。自分の一生を振り返った時、自身の誕生について「生まれてきてよかった」と思える人生であってほしいと、親であれば誰もが願うことでしょう。当然、おふたりもそう願っておられるはずです。親が提供による子どもの誕生を「隠すべきこと」として捉え秘密にすることは、子どもにとっては自分の存在そのものを否定することです。子どもを決して幸せにはしません。生まれてきた子どもの幸せ無くして、家族の幸せはありません。この医療を選択するかどうか、おふたりで何度も話し合いをされていることと思います。その上で、この医療を選択されるのであれば、もう一つ「生まれてきた子どもに正直に話をする」という選択をしていただきたいと思います。 ② AIDであることをオープンにする覚悟が必要です 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日本も批准する「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」では、「子どもはだれでも、自身の遺伝的親を知る権利を持っている」とされています。もし、知ることができない場合は国が保障すべきだとしています。これが「子どもの出自を知る権利」です。この権利を保障するには、提供精子を利用して生まれた子どもが、自身の遺伝的親ともいえる提供者を知りたい場合に、知ることができる仕組みが必要です。残念ながら、日本の生殖医療の法律では現在(2023年6月)のところ、その権利は記載されていません。医療機関の中には、提供者を知る仕組みを独自に作り、医療を提供しているところもありますが、まだまだ少ないのが現状です。この仕組みが無いがゆえに、親自身も医療機関も、提供者が誰かわからない場合も少なくありません。そんな中2022年12月には、日本国内の精子提供や卵子提供で生まれた人と過去に精子や卵子を提供した人を結び付けることを通して、自己の遺伝情報を知る権利の重要性を啓発し、提供型生殖補助医療の抱える課題の解決を目指す「一般社団法人ドナーリンク・ジャパン」という法人が設立されました。我が国においても「出自を知る権利」を保証するよう求める声が上がってきています。繰り返しになりますが、親自身も医療機関も提供者が誰かわからない場合でも、生まれた子どもに幼少期から正直に、提供で生まれたことを話し続けることは、必要不可欠です。 「親になりたい」を叶えるもう一つの選択肢「里親制度と養子縁組」―あなたらしい家族を見つけませんか ① 不妊治療の先の選択肢 世界保健機関(WHO)は、世界全体で成人の約6人に1人が不妊を経験していると発表しました(2023年4月)。不妊治療をしたにもかかわらず実子を得ることができなかったご夫婦は、子どもを産んで「親になる」という青写真が否定される現実に直面します。近年の治療技術の急速な発達と治療方法の拡大は、治療に通えば子供が授かるといった思い込みを、不妊当事者を含む社会一般に植え付けている面があります(安田・山田,2008)。不妊治療をしてなかなか子どもが授からなくても治療のやめ時を決められず、年齢を重ねていくご夫婦は決して少なくありません。社会に根深くある血縁主義の家族観の中で不妊治療以外に家族を作る選択肢があることに目を向けることができなくなっているのかもしれません。 ② 里親制度や養子縁組で子どもを育てる「親になる」 日本ではこれまで、実親の元で暮らすことができない「社会的養護」が必要な子どもの多くは、乳児院や児童養護施設での施設養護で暮らしていました。しかし家庭環境の中で特定の養育者に育てられることが、子どもの心身の健康な育ちに有益であることが認められてきました。里親制度は児童福祉法で規定された制度で、いろいろな事情で実親の元で育つことができない子どもをある一定期間家庭で養育する制度です。養子制度は民法により実親が育てられない子どもを縁組することによって法律上でも親子となる制度です。「新しい社会的養育ビジョン」(2017)では、乳幼児には原則家庭養育を徹底することや里親委託の推進など、子どもたちが家庭養育で育つことができるようより一層力を入れるよう示しました。里親や養親になったご夫婦の多くは、子どもを育てることの意味、今後の家族のあり方を真剣に話し合った上で意識的に「親になる」ことを選択した夫婦といえます。不妊治療、里親制度、養子縁組など多様な選択肢から夫婦にとって望ましい家族の形を選び、幸せな家庭を作っていくことが大事なのではないでしょうか。 【文:精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会】 「精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会」とは提供精子により生まれた人と研究者からなるグループで、提供精子・卵子により生まれた人へのサポートの手段として、社会的養護の分野で広がっているライフストーリーワークを応用する方法を検討しています。ライフストーリーワークは、サポーターとともに、これまでの人生を振り返り、整理するソーシャルワークの技法です。提供精子・卵子により生まれた方の置かれている状況やライフストーリーワークについての講座を実施しています。詳細は、研究会HPをご参照ください。
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2023.06.02