排卵障害をおこす疾患(内分泌異常)

排卵障害をおこす疾患(内分泌異常)

2023.06.02

ゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモンン放出ホルモン:GnRH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)などのホルモンは密接に連携しながら排卵や卵巣からのホルモン分泌の調整を行いますが、その分泌に異常があると、排卵障害や着床障害につながります。
なお、若い女性でも卵巣機能が低下して原始卵胞の数が少なくなり、このために排卵しない場合もあります。これを「早発閉経症」といいます。また、副腎皮質や甲状腺の機能の異常が原因で排卵障害がおこるケースもあります。

【排卵障害の代表的な疾患】

視床下部性排卵障害ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌の乱れや量の減少により卵胞の発育が悪くなり、月経はあるが排卵しない「無排卵周期症」や、月経そのものがない「無月経症」などを引き起こします。精神的なストレスや無理なダイエットが原因となるケースも多く見られます。
高プロラクチン血症妊娠していないにもかかわらず、下垂体から分泌される乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)の量が増えてしまい、排卵が抑制されます。視床下部から分泌される神経伝達物質ドーパミンの不足や、胃潰瘍やうつ病の薬の服用、下垂体にできた腫瘍などが原因です。
多嚢胞卵巣症候群(PCOS)卵胞が途中までしか発育しないことによって、卵巣表面の白膜上皮という部分が肥厚する病気です。卵胞の成熟も排卵もしにくくなります。この疾患は肥満傾向の人に多く見られ、また男性ホルモンの過剰分泌を伴って多毛になる人もいます。
黄体機能不全卵胞の成熟が不十分な状態で排卵すると、排卵後にできる黄体の働きが悪くなり、黄体ホルモン(プロゲステロン)が十分分泌されなかったり、子宮内膜が十分厚くなることができません。このため、受精卵の着床障害が引き起こされます。こうした黄体機能不全は、卵胞の発育を促す卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌不足や、LHサージが不十分であることなどが原因とされます。基礎体温の低温相と高温相の差が小さかったり、高温相が不規則であったり、日数が短かったりするのが特徴です。

月経異常と不妊

● 無月経
主に「原発性無月経」と「続発性無月経」に分けられます。
原発性無月経は、18歳になっても初経がおとずれない状態のことをいい、子宮・卵巣などの発育異常や、膣や処女膜の閉鎖、卵巣機能不全(視床下部性・下垂体性・卵巣性)、染色体異常などが原因として考えられます。
続発性無月経は、初経以降、妊娠・授乳・閉経期を除き、3ヶ月以上月経が起こらない状態をいいます。こちらは精神的な負荷が原因となっている場合も多く、過度なダイエットやストレス過多、激しい運動などが挙げられます。
放置しておくと、ホルモンバランスの崩れによる体調不良や不妊症につながります

● 無排卵月経
月経周期は不順なことが多く、月経量が異常に多いあるいは少ないなどの月経量異常、月経期間が長いあるいは短いなどの月経持続期間の異常がみられます。基礎体温を測定し、高温相がなく一相性を示す場合に、無排卵月経が疑われます。これはホルモンの分泌異常が原因です。放置しておくと不妊症の原因にもなります。

内分泌疾患と不妊

排卵は、内分泌機能(ホルモンを血液の中に分泌する機能)と密接に関連しており、内分泌機能の異常が排卵障害の原因ともなります。内分泌疾患の好発年齢は女性の生殖年齢に一致していることから、月経異常を診断・治療していく中では、内分泌疾患の存在を念頭に置くことが大切です。
不妊の原因となる代表的な内分泌疾患が「高プロラクチン血症」です。その他にも、「甲状腺機能異常症」「副腎性器症候群」「シーハン症候群」「糖尿病」などがあります。

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