不育症の検査

不育症の検査

2023.06.02

一般に、1回の流産でリスク因子を検査する必要はありませんが、2回~3回以上流産を繰り返す場合は、両親のどちらかにリスク因子がある可能性があるので、検査の実施が検討されます。
なお、1回の流産でも妊娠10週以降の流産の場合や死産、早期新生児死亡の場合には、母体の要因が大きくなるとされていますので、検査をする意義はあります。

不育症一次スクリーニング

【子宮形態検査】 
子宮形態異常がある場合には、着床の障害になったり、胎児や胎盤を圧迫して流・早産を繰り返すことがあります。

子宮卵管造影検査(HSG)子宮の中に造影剤を入れて子宮の内腔の形をみます
経膣超音波検査子宮の中に生理的食塩水を入れて見るSonohysterography(子宮腔内液体注入法)や二次元、三次元の超音波検査などがスクリーニングとして利用されています。
中隔子宮と双角子宮の鑑別には、MRIや3次元超音波検査が必要となります。

【内分泌検査】
甲状腺機能亢進・低下症、糖尿病などでは流産のリスクが高くなるため、これらの内分泌疾患の有無を調べるスクリーニング検査を行います。

甲状腺機能検査血液検査で甲状腺のホルモン検査(fT4、TSHなど)を行います
糖尿病検査血液検査で糖尿病検査を行います

【夫婦染色体検査】 
胎児染色体異常の多くは偶発性ですが、夫婦の染色体異常が原因の場合があります。夫婦の染色体検査により、夫婦の染色体異常の有無がわかりますが、以下のような点に留意する必要があります。

夫婦染色体検査夫婦で染色体に構造的な異常がないかどうか血液検査で調べます(スクリーニングとしては保険適用外)。 ※夫婦染色体検査実施時の注意事項
染色体や遺伝子などの遺伝情報を取り扱う際には、検査の実施前から十分な遺伝カウンセリングが必要です。不育症では、夫婦どちらの原因かを特定することは、必ずしも夫婦の利益につながりません。染色体異常があった場合に、どちらか特定せずに結果を伝達するという選択肢も含め、予め夫婦と担当医で確認をすることが望まれます。

【抗リン脂質抗体検査】
抗リン脂質抗体症候群では、血栓症などにより、流産・死産を繰り返すことがあります。

抗リン脂質抗体検査血栓や流産のリスクとなる抗リン脂質抗体を調べます。
抗CLβ2GPI複合体抗体
抗CLIgG抗体
抗CLIgM抗体(保険適用外)
ループスアンチコアグラント(dRVVT法とaPPT法が保険収載されています)
上記のいずれか一つ以上が陽性となった際は、12週間以上の間隔をあけて再検査することが必要です。
再検査の結果、陽性が持続した場合、抗リン脂質抗体症候群と診断します。
再検査の結果、陰性となった場合、偶発的抗リン脂質抗体陽性例と診断します。

不育症選択的検査

一次スクリーニングほど明確ではありませんが、不育症との関連性が示唆されている検査です。

抗PE抗体抗PEIgG抗体、抗PEIgM抗体(保険適用外)
血栓性素因スクリーニング(凝固因子検査)第Ⅻ因子活性
妊娠初期に流産を繰り返す方に、第Ⅻ因子欠乏症が認められる場合があります         プロテインS活性もしくは抗原
妊娠初期流産、後期流産もしくは死産を繰り返す方に、プロテインS欠乏症が認められる場合がありますプロテインC活性もしくは抗原
頻度は低いですが、不育症例の一部に低下する症例がありますAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
抗リン脂質抗体症候群や血栓性素因のある方では、APTTが延長する場合があります。

recommend ほかの記事を読む

そのほかのご案内