不育症の治療

不育症の治療

2023.06.02

不育症の治療法については、科学的根拠の信頼度の度合いに差がありますが、厚生労働科学研究班及び関係学会の指針を踏まえ、国内外の科学的根拠に基づいたリスク因子別の治療法が示されています。

不育症のリスク毎の治療

子宮形態異常子宮形態異常に対する手術療法の有用性は、まだ明らかになっていません。
中隔子宮では手術を行った方が経過観察より妊娠成功率が高いことが判明しましたが、双角子宮では手術を行っても経過観察でも妊娠成功率は同じでした。
一方、中隔子宮、双角子宮でも手術を行わない経過観察で、診断後の最初の妊娠で59%が、最終的には78%が出産に至るという報告があります。
弓状子宮では手術療法の有効性を示すデータは示されていません。
いずれも症例数が少なかったため結論を出すに至っておらず、現時点では、双角子宮に対しての積極的な手術療法はメリットがない、中隔子宮についてはメリットがあるかもしれない、弓状子宮での手術療法についての有効性についても、明確なエビデンスはないので、積極的な手術療法は第一選択の治療法ではないとされています。
子宮の形態異常があっても、それが直接健康に影響を及ぼすことはなく、必ずしも治療が必要というわけではありません。
内分泌異常甲状腺機能亢進・低下症では、内科専門医の診療を受け、機能が正常になってから妊娠をすることが重要です。妊娠後も引き続き治療が必要です。
糖尿病も、内科専門医の診断を受け、十分コントロールした上で、妊娠することが望まれます。妊娠前から妊娠経過中、産後にわたり、血糖の管理・治療が必要です。
染色体異常夫婦のどちらかに均衡型転座などの染色体異常が発見された場合は、十分な遺伝カウンセリングを行うことが必要です。
染色体異常の種類に応じ、染色体正常児を妊娠する確率や、着床前診断等のメリット、デメリット等を示した上で今後の治療方針を決める必要があります。
均衡型転座というタイプでは最終的に60~80%が出産に至ることが最近分かってきました。
なお現在のところ、着床前診断を行った方が自然妊娠より生児獲得率が高くなるというエビデンスはありません。
抗リン脂質抗体症候群抗リン脂質抗体症候群では、特に妊娠中は血栓症のリスクが高まります。
低用量アスピリンとへパリンの併用療法については、有効性を示す科学的根拠があります。
へパリン投与時にはへパリン起因性血小板減少症(HIT)が、まれに起こることがあるので投与開始2週間前後で血小板数を確認する必要があります。
妊娠中、十分なチェックを受ける必要があります。
偶発的抗リン脂質症候群陽性例(再検して陰性化した場合)や抗PE抗体陽性例、抗PS抗体(抗フォスファチジルセリン抗体)陽性例については、治療の必要性・有効性ともに、専門家の間でも、また結論が出ていません。
プロテインS欠乏症・プロテインC欠乏症プロテインS欠乏症で、妊娠10週までの繰り返す初期流産の既往がある場合、低用量アスピリン療法を行った方がよいというデータが出ています。
また、妊娠10週以降の流・死産の既往がある場合、低用量アスピリン+へパリン療法が低用量アスピリン療法より有効であるとする報告があります。
プロテインS欠乏症・プロテインC欠乏症に対しては、これらの状況を踏まえ、治療の適応を検討します。
第Ⅻ因子欠乏症明確な治療方針は決まっていませんが、低用量アスピリン療法で良好な治療成績が得られているとのデータがあります。
2回までの流産既往の場合流産リスクが無い場合も有る場合も、臨床心理士もしくは産婦人科医によるカウンセリングを行った方がストレスが改善し、妊娠成功率が高いことが研究班の成績で明らかとなっています。
カウンセリングを受けることができなければ、十分な時間をとってリスク因子や今後の治療方針をていねいに説明してもらうとよいでしょう。
ストレスが強く、うつの状態である場合ストレスが強い場合でも多くの場合、上記の方法(カウンセリングや時間をかけて説明)で改善するとの成績があります。
不十分であれば精神神経科医を受診し、認知行動療法等の精神神経科的治療をうけると有効である場合があります。
リスク因子が不明である場合多くの場合、胎児染色体異常を繰り返した偶発的な流産を繰り返した症例であるので、カウンセリングや十分な説明を受けるのみで、特別な治療を必要としません。しかし、一部の症例で難治性の原因不明流産が含まれています。これらの症例は今後の研究によりリスク因子や治療法が開発されていくものと思われます。

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