喫煙・アルコール・薬物と不妊

喫煙・アルコール・薬物と不妊

2023.06.01

喫煙と不妊

喫煙は、男性の造精機能に影響を及ぼすなどの影響が指摘されるようになってきています。また、喫煙は性機能の低下に密接に関連しており、勃起不全(ED)を発症リスクが高くなるという報告があります。1日あたりの喫煙量が多い人ほど勃起機能の低下に関連しているとの報告もあります。
女性の場合、喫煙は卵巣の老化を促進させることにつながり、閉経が早いことが指摘されています。喫煙によって卵巣機能が低下することもわかっており、喫煙量に比例して妊孕性が低下すると報告されています。また、喫煙は妊孕性を低下させるだけでなく、その後の胎児の健康にも悪影響を及ぼすことが明らかになっています。例えば喫煙習慣のある女性は流早産を招きやすく、また低出生体重児の出生率が高いことが知られています。
「受動喫煙」も煙草を吸う本人の「能動喫煙」と同様の影響を及ぼすことが明らかになっています。妊娠を希望する場合は、周囲も含めた禁煙が重要です。また、不妊以外にも、喫煙と深く関係している病気は少なくないことからも、早めに禁煙することが望ましいでしょう。

アルコールと不妊

アルコールは、適度な量であれば個人の生活の質を高め満足感をもたらしますが、多量の飲酒や飲酒習慣が続くと、心身に大きな影響をもたらします。アルコールには中枢神経を抑制する作用があり、この中枢神経抑制作用が性機能不全に影響するといわれています。
男性の場合、過度の飲酒は、男性ホルモン(テストステロン)の働きを低下させ、精子数の減少、精巣の萎縮、勃起不全などに陥る可能性が示唆されています。女性の場合、ホルモン分泌の変化に関する検討は少なく、不妊との関係を論じるのはいまだ十分ではないようですが、排卵障害などの卵巣機能不全をもたらすとの指摘もあります。
なお、妊娠初期の女性が気づかないまま飲酒すると、胎児の発育障害や器官形成不全などを引き起こすことがあり、これを胎児性アルコール症候群(Fetal alcohol syndrome:FAS)といいます。妊娠中はアルコールを摂取しないようにしましょう。

薬物と不妊

現在、臨床では膨大な薬剤が使用されており、それらは適用、用法・用量、禁忌などが決められています。副作用に関しては中枢神経系、心・血管系、消化器系などについて比較的詳細に報告されていますが、男女の性腺系への影響についてはほとんど記載されていません。
しかし、薬物の乱用も、不妊を引き起こすことがあります。睡眠薬や精神安定剤などのうち、脳の中枢に働き掛けるものは、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を低下させたり、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン:PRL)の分泌を亢進させたりする場合があり、月経異常の原因となることがあります。
薬剤の使用に際しては、疾病の重症度や予後を考えながらも、ややもすると無視されがちな生殖機能の保全に、十分配慮していくことが大切です。

recommend ほかの記事を読む

そのほかのご案内