不妊の原因は男女半々…二人で受診を
長年、不妊は女性側に原因があるとされ、女性の問題と考えられてきました。
しかし、近年の研究では、不妊の原因は男女共に同じくらいの確率があることがわかってきています。そのため、不妊治療を受けるかどうか検討するにあたっては、二人で受診し、男性も検査を受けることが大変重要です。原因不明の場合も少なくありませんが、できるだけ男女同時に検査をスタートさせ、正確な原因究明を行うことが、治療の早道です。
不妊と向き合うには、二人の協力が欠かせません
しかしながら、女性だけが検査を受け、治療を続ける習慣が今も残り、検査や治療を受ける男性は少ないのが現状です。男性にも不妊の原因があるということや男性側にどのような原因があるのかあまり知られていないため、性交ができていれば男性側に問題があるとは思いもよらないのかもしれません。
また、「もしかしたら不妊かもしれない」と最初に考えるのはたいてい女性です。妊娠しない理由を知りたい女性が先に検査を受け、男性も検査を受ける必要を知ったとしても、パートナーの男性に「検査を受けて」とは切り出しにくく、女性側に原因が見つからない場合はなおさらです。こうして、男性が検査を受けるまでに時間を要することで不妊原因の特定が遅れ、不適切な治療が繰り返されている可能性が指摘されています。
男性にとって婦人科を受診するのはかなり抵抗感があるものです。そのような場合は、不妊専門クリニックや、泌尿器科でも男性不妊を扱っているところがあるため、そうしたところを受診するのも一案です。
女性は年齢を重ねると妊娠が難しくなっていくのが現実です。時間とともに生殖可能年齢を意識して焦りを感じる女性の思いとからだの仕組みを理解し、二人の問題として、二人が協力して不妊に向き合うことがとても大切です。
■ 不妊の原因
■ 妊娠を妨げる病気
■ からだの基礎知識
■ リンク集(不妊に関する情報、医療機関情報など)
二人で治療に向き合えない場合も…
一方が不妊を解決しようと一生懸命なのに、他方は楽観的あるいは消極的というカップルは少なくありません。
特に、女性だけが受診している場合、治療の経過とともに二人の距離が離れてしまい、治療や子どもに対する気持ちの温度差によって感情をぶつけ合い、ともに傷ついてしまうこともあります。 治療が進むにつれて、女性は治療優先の生活になりがちです。パートナーの男性に関わってほしいと思いながらも、「仕事を休んでまで受診してもらうのは心苦しい」と遠慮したり、「どうせわかってくれない」と最初からあきらめていて、話し合えていないケースもあります。
男性は「そのうちできるよ」と楽観的なことがありますが、それがいたわりや励ましの気持ちからの言葉であっても、女性にはそうした言葉や態度が、「夫は不妊を自分のことと思っていない」と映ることがあります。女性まかせにしている男性の場合には、女性がどのような治療を受け、それによってどのような思いをしているのかを知らない場合がありますし、治療内容や治療の成功率についての情報を把握しておらず、治療すれば妊娠できるものと思っていることもあります。
男性の中には、「産むのは女性」「治療を受けているのは女性」という理由から、治療の最終的な選択権は女性にある、つまり「自分はあれこれ口を出さないほうがいいのでは」と考える人もいます。また、「プレッシャーはかけたくないので、口出ししない」という思いの人もいますし、そうした態度をむしろ「ありがたかった」と話す女性がいるのも事実です。
しかし、そうすることで、女性だけに治療の選択がゆだねられ、負担がのしかかることになり、治療の選択やステップアップについても全て自分で決めていかなくてはならなくなり、女性は自分にまかされているだけにさらにつらくなります。 不妊への向き合い方はカップルによってそれぞれですが、「二人のことなのだから一緒に向き合ってほしい」「主体者として取り組んでほしい」と考える女性は少なくありません。二人で不妊に向き合うためにも、男性が不妊や不妊治療の知識を持つことはとても重要です。具体的な治療内容や治療方法について知ることで、今後の治療について一緒に考え相談できるようになったり、治療が女性にとってどれだけ大変なのかを知ることで、パートナーの女性を思いやる言葉をかけることができるようになります。
■ 不妊の基礎知識
■ リンク集(不妊に関する情報、医療機関情報など)
男性の悩み
不妊が女性の問題と考えられてきたこと、原因が男女どちらにあるにしても治療の主体が女性であることなどから、不妊相談には女性からの相談が圧倒的多数を占めています。男性はあまり弱みを見せないものだ、多くを語るものではないなどの意識が、相談することをためらわせているのかもしれません。そのため、女性の悩みについてはある程度明らかになっていますが、男性の悩みについてはあまり明らかにされていないのが実情です。
以下に、男性の悩みの一旦をご紹介します。
● 精子に問題があると診断されショック
精子に大きな問題があると診断された男性のほとんどが「驚いて頭が真っ白になった」といいます。「生殖不能者という烙印を押されたようでショックだった」「妻から離婚を言い渡されるかもしれない」など、不妊という事実に傷つきます。
一般的に男性は、女性よりも検査を受けたがらない傾向にあります。精子の所見と性的能力はまったく関係がないにもかかわらず、原因が自分にあった場合、それを性的能力と結び付けがちだからです。検査を受けて男性不妊とわかった場合、自信を失って勃起障害(ED)になるケースも少なくありません。
● 病院での採精による心理的苦痛
人工授精や体外受精のために、病院で精液採取を繰り返し行うことで、不安や屈辱を感じ勃起障害(ED)になる場合もあります。
● 性交時期や禁欲期間を決められる苦痛
排卵日に合わせた性交タイミング指導が始まると、これまでのような自然な性交渉ができなくなるケースが多く報告されています。性交時期や禁欲期間が決められるなど二人の最もプラーベートな空間に第三者が侵入し、「排卵期だけ」「子づくりが目的」といった雰囲気となることで、排卵日になると性交がうまくできなくなる男性がしばしばいます。そのようなことが長い期間続くと、やがてセックスレスを招くこともあります。
性交タイミング指導がプレッシャーになる場合は、子どもをつくることも性交の目的の1つですが、二人の楽しみであり、関係性をよりよくするためのものであることを、二人で話し合ってみるのもよいでしょう。性交に限らずふれあう時間を大切にし、「あなたを大切に思っている」というメッセージを、ときには言葉や態度で表現することも大切です。
● 建設的な話し合いができなくなる
カップルであっても、不妊というデリケートな問題であるだけに、お互いが率直に思いを伝えきれないこともあります。互いの気持ちを推しはかるがゆえに、何も話せなくなってしまうカップルもいます。こうして、不妊の話題を持ち出すたびに二人の雰囲気がギクシャクし、やがてこの話題そのものがタブーになり、本質的・建設的な話し合いができなくなってしまうこともあります。
女性が不妊や不妊治療の悩みを一番わかってほしいのはパートナーです。パートナーだからこそ行き場のない怒りや悲しみなどの感情をぶつけてしまうこともありますが、「気持ちを聴き合う」ことも大切です。
● 妻に申し訳ない、妻のからだが心配
治療によって女性がどのような体験をしているのかを知る場合には、妻の身体的心理的負担を心配し、申し訳なさを感じている場合もあります。
● 二人の楽しみを後回しにしてしまう
生活の中のいろいろな楽しみや目標を「子どもができるまで」と後回しにし、生活のすべてを「治療優先」にしてしまうカップルもいます。女性が「治療一筋」になってしまい、男性がその気持ちについていけないこともあります。治療一筋の生活にせず、二人の共通の楽しみや時間を持つようにすると、不妊や不妊治療のつらさも、少し楽になります。
● 社会の偏見・圧力・プレッシャー
「子どものころからいつかは母親になると思っていた」と語る女性が多いように、「いつか父親になると思っていた」という男性も少なくありません。「男は家族をもって一人前」という社会通念も根強くあります。また、「ちゃんとやっているのか」「つくり方知らないんじゃないか」など、性的な詮索やからかい(セクシャル・ハラスメント)の対象となり、不快な思いをすることもしばしばあります。
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■不妊・不育にまつわる電話相談
【引用・参考文献】
1)久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル、不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会2)聖路加看護大学&フィンレージの会(2008):My Dear あなたの身近な人が不妊で悩んでいたら、聖路加看護大学21世紀COEプログラム Women-Centered Care 不妊ケアプロジェクト
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不妊・不育の相談AID(非配偶者間人工授精)を考えておられるみなさまへ~精子提供で生まれた当事者からのメッセージ~
みなさんは、長い不妊治療の苦しみの中で、この医療の選択を考えておられるのだと思います。「親になりたい」という望みを叶えるための、医療の選択肢の一つであることは間違いありません。しかし近年、提供精子によって生まれた当事者が声を上げ始め、秘密を前提にこの技術を選択した親の気持ちと生まれた人の気持ちに大きくて深いズレがあり、それが親子関係に大きな影響を与えていることがわかってきました。これからAIDを考えておられるみなさんに、精子提供で生まれた当事者の思いや悩みを知っていただくことで、親になった後に直面する問題を、あらかじめ知っておいていただきたいと思います。そして、「なぜ、この医療を選択しようとしているのか」「自分たちはどんな家族を築きたいのか」を、再度話し合っていただきたいと思います。 精子提供で生まれた人の思い ① 精子提供で生まれたAさんからのメッセージ 私は、両親が離婚する際にAIDで生まれたことを聞きました。小さい頃から両親の仲はあまり良くなく、ずっと別居していました。両親の不仲の理由のひとつは、精子提供で生まれた私の存在だったそうです。告知を受けて数年後に母が亡くなり、自分のアイデンティティーについて悩むようになりました。出自について考えることは人それぞれでしょう。一生考えない人もいるかもしれません。進学や就職、結婚、出産・・人生の様々なシーンが考えるきっかけになる人もいるかもしれません。AIDで子どもを持とうと考えておられるみなさんには、「生まれてくる子どもは親とは別の個性を持ち、その人の長い人生がある」ということを知っていてほしいです。そして出自を話すことを前提に、この医療の利用を考えていただきたいのです。隠すことは家族のためになりません。親子の信頼関係が崩れることもあります。私は悩んでいる時に、当事者や研究者の方々に出会うことができました。当事者同士で話し合い、研究者の方と話をすることで、少しずつ自分を取り戻しているところです。AIDに関する悩みはとても繊細で、親にとっても子どもにとっても、他人に話すことが難しい問題です。しかし、自分だけ、家族の中だけでは、前に進めないことも体験しました。悩んだ時は、踏み出す力のある時に、必要な支援と出会うための一歩を踏み出して欲しいと思います。みなさんが必要な支援とつながることを願っています。 ② 精子提供で生まれたBさんからのメッセージ 私は30代になってから、自分が精子提供で生まれたことを聞かされました。両親は医師から、「精子提供を受ければ子どもを産むことができる。生まれた子どもに秘密にすれば問題はない」と言われ、事実を隠し続けてきました。しかし、親の病気により隠しておくことができなくなり、私に事実を告白しました。私はそれまで“自分”だと思っていたものが全て崩れ去り、アイデンティティクライシスに陥りました。また、これまで信頼していた両親が、自分にとって一番大切なことを隠していたという事実がショックで、両親を信じられなくなりました。どうしても子どもが欲しかった両親にすれば、精子提供によって子どもを持てたことは、幸福だったのだと思います。しかし、子どもにとって「自分がなにものなのか」という根幹を隠したまま、長く家族として暮らしていくことは、両親にとっても、不安やうしろめたさなど様々な葛藤があったはずだと思います。私は同じ立場の人たちの自助グループと出会い、押し込めていたいろいろな感情を分け合うことができるようになりました。一人で抱え込まずに悩みを話せる仲間がいたことやライフストーリーワークという方法にも出会い、今は少しずつ落ち着きをとりもどしてきています。子どもには、「どの人の遺伝子を受け継いだのか」を知る権利があります。それが保証されないということは、「自分自身の真ん中に大きな空洞が空いたまま生きていく」ということなのです。アレルギー、病歴、体質などについては命にかかわることだし、趣味嗜好、得意不得意なことは進学、就職など人生の大事な選択に影響します。なにを受け継いだのかわからないままでは、手探りで生きていかざるを得ないのです。精子提供で子どもを持つことを考えておられるのであれば、生まれてくる子どもに事実を隠すのではなく、できる限り早いうちから、「あなたはどのように生まれたのか」ということを誠実に伝えてほしいです。わかる限りの受け継いだ遺伝の情報を伝えていってほしいです。そして、血のつながりがなくても、親子として関係を作っていきたいのだということを、子どもの悩みや思いに寄り添いながら、子どもに伝え続けてほしいのです。現在、「非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ:DOG」や「無精子症と診断された夫婦が子どもを授かりたいと希望した時に様々な角度から相談しあえる自助グループ:すまいる親の会)などの自助グループがあります。悩んだ時、迷ったときはこのような自助グループなどに相談し、決して家族だけで抱え込まないようにしてほしいと思います。 AIDを選択する前に知っておいていただきたいこと ①「妊娠・子どもの誕生」は、人生のゴールではありません。家族の始まりであり、子どもの人生のスタートです 思いもかけない「不妊」という現実の中、「妊娠・子どもの誕生」が、おふたりの人生のゴールになっていませんか?「どうしても子どもが欲しい」と願うおふたりにとって、そう感じられることは仕方のないことかもしれません。しかし、妊娠・出産さえすれば、何もかもが上手くいき、人生がハピーエンドで終わるわけではありません。そこから子育てが始まりますし、生まれた子どもにとっては、まさしく人生がスタートします。子どもが幼児に成長し、小学生、中学生、やがて青年になって、大人になり、仕事を持ち、結婚をするかもしれないし、子どもを持つかもしれません。そしてやがて老いていきます。自分の一生を振り返った時、自身の誕生について「生まれてきてよかった」と思える人生であってほしいと、親であれば誰もが願うことでしょう。当然、おふたりもそう願っておられるはずです。親が提供による子どもの誕生を「隠すべきこと」として捉え秘密にすることは、子どもにとっては自分の存在そのものを否定することです。子どもを決して幸せにはしません。生まれてきた子どもの幸せ無くして、家族の幸せはありません。この医療を選択するかどうか、おふたりで何度も話し合いをされていることと思います。その上で、この医療を選択されるのであれば、もう一つ「生まれてきた子どもに正直に話をする」という選択をしていただきたいと思います。 ② AIDであることをオープンにする覚悟が必要です 精子提供で生まれたということを親から隠されて歳を重ね、ある日突然生まれの真実を知らされ、自分が何者なのかわからない」という苦しみの中で人生を歩んでいる人たちの怒りは、AIDという医療と、そのことを隠していた両親に向いています。昨今、DNA検査は簡単にできる時代です。隠していてもわかってしまう可能性は高く、また、家族の歴史に秘密があると、子どもは「この家には隠された秘密がある」と疑って成長する場合が多いのです。思春期以降に事実を知った子どもたちのほとんどが、大きなショックを受け、親子関係が破綻している場合も少なくありません。この医療を選択するのならば、子どもの命の誕生に「提供者」という存在がかかわったのだということを、子どもが乳幼児の頃からオープンにしていく覚悟が必要です。 ③ 生まれてきた子どもにどう伝えるか 親が提供による子どもの誕生を「良いこと」として捉え、誇りを持って、「あなたの誕生の物語」について、正直な態度で、話をしていくことが必要です。できれば子ども自身の心の負担の無い、赤ちゃんの頃から話をしてあげてください。「赤ちゃんでは理解できないのでは?」と思われるかもしれませんが、それでもいいのです。折に触れて日常のなかで少しずつ、繰り返し親自身が話すことによって、オープンな姿勢が子どもに伝わります。親にとっては、それから先の告知の練習にもなります。いざというときにうろたえずに済むのです。正直に話をしていきながら、子育てをしていくことにより、安定した親子関係の土台を築いていくことができるでしょう。AIDで生まれた人の家族をテーマにした絵本も出版されていています。このような絵本を活用しながら、「愛している」「私の子どもに生まれてくれてありがとう」と繰り返し伝えて欲しいと思います。 ※「ゆみちゃんのものがたり」文・編集・発行/才村眞理 ※「わたしのものがたりMy Story」文/北原由美子・すまいる親の会 編集・発行/清水きよみ ④ 子どもの出自を知る権利 日本も批准する「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」では、「子どもはだれでも、自身の遺伝的親を知る権利を持っている」とされています。もし、知ることができない場合は国が保障すべきだとしています。これが「子どもの出自を知る権利」です。この権利を保障するには、提供精子を利用して生まれた子どもが、自身の遺伝的親ともいえる提供者を知りたい場合に、知ることができる仕組みが必要です。残念ながら、日本の生殖医療の法律では現在(2023年6月)のところ、その権利は記載されていません。医療機関の中には、提供者を知る仕組みを独自に作り、医療を提供しているところもありますが、まだまだ少ないのが現状です。この仕組みが無いがゆえに、親自身も医療機関も、提供者が誰かわからない場合も少なくありません。そんな中2022年12月には、日本国内の精子提供や卵子提供で生まれた人と過去に精子や卵子を提供した人を結び付けることを通して、自己の遺伝情報を知る権利の重要性を啓発し、提供型生殖補助医療の抱える課題の解決を目指す「一般社団法人ドナーリンク・ジャパン」という法人が設立されました。我が国においても「出自を知る権利」を保証するよう求める声が上がってきています。繰り返しになりますが、親自身も医療機関も提供者が誰かわからない場合でも、生まれた子どもに幼少期から正直に、提供で生まれたことを話し続けることは、必要不可欠です。 「親になりたい」を叶えるもう一つの選択肢「里親制度と養子縁組」―あなたらしい家族を見つけませんか ① 不妊治療の先の選択肢 世界保健機関(WHO)は、世界全体で成人の約6人に1人が不妊を経験していると発表しました(2023年4月)。不妊治療をしたにもかかわらず実子を得ることができなかったご夫婦は、子どもを産んで「親になる」という青写真が否定される現実に直面します。近年の治療技術の急速な発達と治療方法の拡大は、治療に通えば子供が授かるといった思い込みを、不妊当事者を含む社会一般に植え付けている面があります(安田・山田,2008)。不妊治療をしてなかなか子どもが授からなくても治療のやめ時を決められず、年齢を重ねていくご夫婦は決して少なくありません。社会に根深くある血縁主義の家族観の中で不妊治療以外に家族を作る選択肢があることに目を向けることができなくなっているのかもしれません。 ② 里親制度や養子縁組で子どもを育てる「親になる」 日本ではこれまで、実親の元で暮らすことができない「社会的養護」が必要な子どもの多くは、乳児院や児童養護施設での施設養護で暮らしていました。しかし家庭環境の中で特定の養育者に育てられることが、子どもの心身の健康な育ちに有益であることが認められてきました。里親制度は児童福祉法で規定された制度で、いろいろな事情で実親の元で育つことができない子どもをある一定期間家庭で養育する制度です。養子制度は民法により実親が育てられない子どもを縁組することによって法律上でも親子となる制度です。「新しい社会的養育ビジョン」(2017)では、乳幼児には原則家庭養育を徹底することや里親委託の推進など、子どもたちが家庭養育で育つことができるようより一層力を入れるよう示しました。里親や養親になったご夫婦の多くは、子どもを育てることの意味、今後の家族のあり方を真剣に話し合った上で意識的に「親になる」ことを選択した夫婦といえます。不妊治療、里親制度、養子縁組など多様な選択肢から夫婦にとって望ましい家族の形を選び、幸せな家庭を作っていくことが大事なのではないでしょうか。 【文:精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会】 「精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会」とは提供精子により生まれた人と研究者からなるグループで、提供精子・卵子により生まれた人へのサポートの手段として、社会的養護の分野で広がっているライフストーリーワークを応用する方法を検討しています。ライフストーリーワークは、サポーターとともに、これまでの人生を振り返り、整理するソーシャルワークの技法です。提供精子・卵子により生まれた方の置かれている状況やライフストーリーワークについての講座を実施しています。詳細は、研究会HPをご参照ください。
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