不育症とは
妊娠はするけれども、流産、死産あるいは早期新生児死亡(生後1週間以内の赤ちゃんの死亡)を繰り返し、子どもを持てない場合、「不育症」とよびます。
流産を3回以上繰り返す「習慣流産」とほぼ同義ですが、習慣流産には死産や早期新生児死亡は含みません。また、流産を2回以上繰り返す場合を「反復流産」といい、最近は反復流産も原因精査の対象と考えられるようになってきました。
流産自体は珍しいことではなく、全妊娠の約15%の頻度で生じるといわれています。原因の多くは受精卵(胎児)の染色体異常であることから、一種の自然淘汰現象としてとらえられます。しかし、何度も続く場合は、妊娠を維持できない原因が他にあると考えられます。
不育症の頻度
流産は妊娠の約15%の頻度で生じるといわれていますが、その頻度は女性の加齢とともに増加します。
流産の際の胎児の染色体異常の頻度は、約60%程度といわれていましたが、2008年~2010年に行った厚生労働科学研究班では、流産の約80%に胎児の染色体異常が認められました。これは、女性の妊娠年齢が高齢化したことによると考えられています。
正確な不育症例の数はわかっていませんが、年間の妊娠届出数や流産の頻度、女性の年齢分布などから、毎年3.1万人の不育症患者が出現していると推定されています。これらの不育症は累積して実際はもっと多い可能性があり、不育症は決してめずらしいものではありません。
不育症のリスク因子
妊娠初期の流産の原因で最も頻度の高いものは胎児の染色体異常で、約80%に存在します。したがって3回流産したことのある人で、胎児染色体異常がたまたま3回繰り返す場合も、51%を占めるとされています。つまり、胎児染色体異常以外の要因は約半数となります。
不育症のリスク因子には、夫婦の染色体異常に加えて、女性側の原因として、子宮形態異常、内分泌異常、凝固異常、母体の高齢年齢などがあります。主なものの内容は以下のとおりです。
※リスク因子がある場合でも、100%流産するわけではないので、「原因」ではなく「リスク因子」と表現しています。
不育症の検査
一般に、1回の流産でリスク因子を検査する必要はありませんが、2回~3回以上流産を繰り返す場合は、両親のどちらかにリスク因子がある可能性があるので、検査の実施が検討されます。
なお、1回の流産でも妊娠10週以降の流産の場合や死産、早期新生児死亡の場合には、母体の要因が大きくなるとされていますので、検査をする意義はあります。
不育症の治療
不育症の治療法については、科学的根拠の信頼度の度合いに差がありますが、厚生労働科学研究班及び関係学会の指針を踏まえ、国内外の科学的根拠に基づいたリスク因子別の治療法が示されています。
さらに詳しい情報の入手先
▼ 厚生労働省研究班のサイト「Fuiku-Labo(不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究)」では、不育症に関する基礎知識がさらに詳しく掲載されています。
Fuiku-Labo
▼ このほか、リンク集にも詳しく掲載しております。
リンク集
【引用・参考文献】
*反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル
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日本も批准する「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」では、「子どもはだれでも、自身の遺伝的親を知る権利を持っている」とされています。もし、知ることができない場合は国が保障すべきだとしています。これが「子どもの出自を知る権利」です。この権利を保障するには、提供精子を利用して生まれた子どもが、自身の遺伝的親ともいえる提供者を知りたい場合に、知ることができる仕組みが必要です。残念ながら、日本の生殖医療の法律では現在(2023年6月)のところ、その権利は記載されていません。医療機関の中には、提供者を知る仕組みを独自に作り、医療を提供しているところもありますが、まだまだ少ないのが現状です。この仕組みが無いがゆえに、親自身も医療機関も、提供者が誰かわからない場合も少なくありません。そんな中2022年12月には、日本国内の精子提供や卵子提供で生まれた人と過去に精子や卵子を提供した人を結び付けることを通して、自己の遺伝情報を知る権利の重要性を啓発し、提供型生殖補助医療の抱える課題の解決を目指す「一般社団法人ドナーリンク・ジャパン」という法人が設立されました。我が国においても「出自を知る権利」を保証するよう求める声が上がってきています。繰り返しになりますが、親自身も医療機関も提供者が誰かわからない場合でも、生まれた子どもに幼少期から正直に、提供で生まれたことを話し続けることは、必要不可欠です。 「親になりたい」を叶えるもう一つの選択肢「里親制度と養子縁組」―あなたらしい家族を見つけませんか ① 不妊治療の先の選択肢 世界保健機関(WHO)は、世界全体で成人の約6人に1人が不妊を経験していると発表しました(2023年4月)。不妊治療をしたにもかかわらず実子を得ることができなかったご夫婦は、子どもを産んで「親になる」という青写真が否定される現実に直面します。近年の治療技術の急速な発達と治療方法の拡大は、治療に通えば子供が授かるといった思い込みを、不妊当事者を含む社会一般に植え付けている面があります(安田・山田,2008)。不妊治療をしてなかなか子どもが授からなくても治療のやめ時を決められず、年齢を重ねていくご夫婦は決して少なくありません。社会に根深くある血縁主義の家族観の中で不妊治療以外に家族を作る選択肢があることに目を向けることができなくなっているのかもしれません。 ② 里親制度や養子縁組で子どもを育てる「親になる」 日本ではこれまで、実親の元で暮らすことができない「社会的養護」が必要な子どもの多くは、乳児院や児童養護施設での施設養護で暮らしていました。しかし家庭環境の中で特定の養育者に育てられることが、子どもの心身の健康な育ちに有益であることが認められてきました。里親制度は児童福祉法で規定された制度で、いろいろな事情で実親の元で育つことができない子どもをある一定期間家庭で養育する制度です。養子制度は民法により実親が育てられない子どもを縁組することによって法律上でも親子となる制度です。「新しい社会的養育ビジョン」(2017)では、乳幼児には原則家庭養育を徹底することや里親委託の推進など、子どもたちが家庭養育で育つことができるようより一層力を入れるよう示しました。里親や養親になったご夫婦の多くは、子どもを育てることの意味、今後の家族のあり方を真剣に話し合った上で意識的に「親になる」ことを選択した夫婦といえます。不妊治療、里親制度、養子縁組など多様な選択肢から夫婦にとって望ましい家族の形を選び、幸せな家庭を作っていくことが大事なのではないでしょうか。 【文:精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会】 「精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会」とは提供精子により生まれた人と研究者からなるグループで、提供精子・卵子により生まれた人へのサポートの手段として、社会的養護の分野で広がっているライフストーリーワークを応用する方法を検討しています。ライフストーリーワークは、サポーターとともに、これまでの人生を振り返り、整理するソーシャルワークの技法です。提供精子・卵子により生まれた方の置かれている状況やライフストーリーワークについての講座を実施しています。詳細は、研究会HPをご参照ください。
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