column コラム一覧
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#不妊・不育の相談大阪市では、不妊検査費や治療費に対する新たな助成制度が始まります
大阪市では、子どもを望む方や不妊治療をされている方の経済的な負担を軽減するため、令和5年度から新たに独自で不妊検査費や不妊治療費の一部を助成します。詳しくは大阪市ホームページをご覧ください。 大阪市ホームページ TEL:06-6208-9966
2023.06.08 -
#不妊・不育の相談不育症検査費用助成事業のご案内
大阪府・大阪市では、不育症の方の経済的な負担の軽減を図るため、令和3年度からの不育症検査に要する費用の一部について助成を実施します。 ■ 大阪府HP ■ 大阪市HP
2023.06.08 -
#不妊・不育の相談AID(非配偶者間人工授精)を考えておられるみなさまへ~精子提供で生まれた当事者からのメッセージ~
みなさんは、長い不妊治療の苦しみの中で、この医療の選択を考えておられるのだと思います。「親になりたい」という望みを叶えるための、医療の選択肢の一つであることは間違いありません。しかし近年、提供精子によって生まれた当事者が声を上げ始め、秘密を前提にこの技術を選択した親の気持ちと生まれた人の気持ちに大きくて深いズレがあり、それが親子関係に大きな影響を与えていることがわかってきました。これからAIDを考えておられるみなさんに、精子提供で生まれた当事者の思いや悩みを知っていただくことで、親になった後に直面する問題を、あらかじめ知っておいていただきたいと思います。そして、「なぜ、この医療を選択しようとしているのか」「自分たちはどんな家族を築きたいのか」を、再度話し合っていただきたいと思います。 精子提供で生まれた人の思い ① 精子提供で生まれたAさんからのメッセージ 私は、両親が離婚する際にAIDで生まれたことを聞きました。小さい頃から両親の仲はあまり良くなく、ずっと別居していました。両親の不仲の理由のひとつは、精子提供で生まれた私の存在だったそうです。告知を受けて数年後に母が亡くなり、自分のアイデンティティーについて悩むようになりました。出自について考えることは人それぞれでしょう。一生考えない人もいるかもしれません。進学や就職、結婚、出産・・人生の様々なシーンが考えるきっかけになる人もいるかもしれません。AIDで子どもを持とうと考えておられるみなさんには、「生まれてくる子どもは親とは別の個性を持ち、その人の長い人生がある」ということを知っていてほしいです。そして出自を話すことを前提に、この医療の利用を考えていただきたいのです。隠すことは家族のためになりません。親子の信頼関係が崩れることもあります。私は悩んでいる時に、当事者や研究者の方々に出会うことができました。当事者同士で話し合い、研究者の方と話をすることで、少しずつ自分を取り戻しているところです。AIDに関する悩みはとても繊細で、親にとっても子どもにとっても、他人に話すことが難しい問題です。しかし、自分だけ、家族の中だけでは、前に進めないことも体験しました。悩んだ時は、踏み出す力のある時に、必要な支援と出会うための一歩を踏み出して欲しいと思います。みなさんが必要な支援とつながることを願っています。 ② 精子提供で生まれたBさんからのメッセージ 私は30代になってから、自分が精子提供で生まれたことを聞かされました。両親は医師から、「精子提供を受ければ子どもを産むことができる。生まれた子どもに秘密にすれば問題はない」と言われ、事実を隠し続けてきました。しかし、親の病気により隠しておくことができなくなり、私に事実を告白しました。私はそれまで“自分”だと思っていたものが全て崩れ去り、アイデンティティクライシスに陥りました。また、これまで信頼していた両親が、自分にとって一番大切なことを隠していたという事実がショックで、両親を信じられなくなりました。どうしても子どもが欲しかった両親にすれば、精子提供によって子どもを持てたことは、幸福だったのだと思います。しかし、子どもにとって「自分がなにものなのか」という根幹を隠したまま、長く家族として暮らしていくことは、両親にとっても、不安やうしろめたさなど様々な葛藤があったはずだと思います。私は同じ立場の人たちの自助グループと出会い、押し込めていたいろいろな感情を分け合うことができるようになりました。一人で抱え込まずに悩みを話せる仲間がいたことやライフストーリーワークという方法にも出会い、今は少しずつ落ち着きをとりもどしてきています。子どもには、「どの人の遺伝子を受け継いだのか」を知る権利があります。それが保証されないということは、「自分自身の真ん中に大きな空洞が空いたまま生きていく」ということなのです。アレルギー、病歴、体質などについては命にかかわることだし、趣味嗜好、得意不得意なことは進学、就職など人生の大事な選択に影響します。なにを受け継いだのかわからないままでは、手探りで生きていかざるを得ないのです。精子提供で子どもを持つことを考えておられるのであれば、生まれてくる子どもに事実を隠すのではなく、できる限り早いうちから、「あなたはどのように生まれたのか」ということを誠実に伝えてほしいです。わかる限りの受け継いだ遺伝の情報を伝えていってほしいです。そして、血のつながりがなくても、親子として関係を作っていきたいのだということを、子どもの悩みや思いに寄り添いながら、子どもに伝え続けてほしいのです。現在、「非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ:DOG」や「無精子症と診断された夫婦が子どもを授かりたいと希望した時に様々な角度から相談しあえる自助グループ:すまいる親の会)などの自助グループがあります。悩んだ時、迷ったときはこのような自助グループなどに相談し、決して家族だけで抱え込まないようにしてほしいと思います。 AIDを選択する前に知っておいていただきたいこと ①「妊娠・子どもの誕生」は、人生のゴールではありません。家族の始まりであり、子どもの人生のスタートです 思いもかけない「不妊」という現実の中、「妊娠・子どもの誕生」が、おふたりの人生のゴールになっていませんか?「どうしても子どもが欲しい」と願うおふたりにとって、そう感じられることは仕方のないことかもしれません。しかし、妊娠・出産さえすれば、何もかもが上手くいき、人生がハピーエンドで終わるわけではありません。そこから子育てが始まりますし、生まれた子どもにとっては、まさしく人生がスタートします。子どもが幼児に成長し、小学生、中学生、やがて青年になって、大人になり、仕事を持ち、結婚をするかもしれないし、子どもを持つかもしれません。そしてやがて老いていきます。自分の一生を振り返った時、自身の誕生について「生まれてきてよかった」と思える人生であってほしいと、親であれば誰もが願うことでしょう。当然、おふたりもそう願っておられるはずです。親が提供による子どもの誕生を「隠すべきこと」として捉え秘密にすることは、子どもにとっては自分の存在そのものを否定することです。子どもを決して幸せにはしません。生まれてきた子どもの幸せ無くして、家族の幸せはありません。この医療を選択するかどうか、おふたりで何度も話し合いをされていることと思います。その上で、この医療を選択されるのであれば、もう一つ「生まれてきた子どもに正直に話をする」という選択をしていただきたいと思います。 ② AIDであることをオープンにする覚悟が必要です 精子提供で生まれたということを親から隠されて歳を重ね、ある日突然生まれの真実を知らされ、自分が何者なのかわからない」という苦しみの中で人生を歩んでいる人たちの怒りは、AIDという医療と、そのことを隠していた両親に向いています。昨今、DNA検査は簡単にできる時代です。隠していてもわかってしまう可能性は高く、また、家族の歴史に秘密があると、子どもは「この家には隠された秘密がある」と疑って成長する場合が多いのです。思春期以降に事実を知った子どもたちのほとんどが、大きなショックを受け、親子関係が破綻している場合も少なくありません。この医療を選択するのならば、子どもの命の誕生に「提供者」という存在がかかわったのだということを、子どもが乳幼児の頃からオープンにしていく覚悟が必要です。 ③ 生まれてきた子どもにどう伝えるか 親が提供による子どもの誕生を「良いこと」として捉え、誇りを持って、「あなたの誕生の物語」について、正直な態度で、話をしていくことが必要です。できれば子ども自身の心の負担の無い、赤ちゃんの頃から話をしてあげてください。「赤ちゃんでは理解できないのでは?」と思われるかもしれませんが、それでもいいのです。折に触れて日常のなかで少しずつ、繰り返し親自身が話すことによって、オープンな姿勢が子どもに伝わります。親にとっては、それから先の告知の練習にもなります。いざというときにうろたえずに済むのです。正直に話をしていきながら、子育てをしていくことにより、安定した親子関係の土台を築いていくことができるでしょう。AIDで生まれた人の家族をテーマにした絵本も出版されていています。このような絵本を活用しながら、「愛している」「私の子どもに生まれてくれてありがとう」と繰り返し伝えて欲しいと思います。 ※「ゆみちゃんのものがたり」文・編集・発行/才村眞理 ※「わたしのものがたりMy Story」文/北原由美子・すまいる親の会 編集・発行/清水きよみ ④ 子どもの出自を知る権利 日本も批准する「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」では、「子どもはだれでも、自身の遺伝的親を知る権利を持っている」とされています。もし、知ることができない場合は国が保障すべきだとしています。これが「子どもの出自を知る権利」です。この権利を保障するには、提供精子を利用して生まれた子どもが、自身の遺伝的親ともいえる提供者を知りたい場合に、知ることができる仕組みが必要です。残念ながら、日本の生殖医療の法律では現在(2023年6月)のところ、その権利は記載されていません。医療機関の中には、提供者を知る仕組みを独自に作り、医療を提供しているところもありますが、まだまだ少ないのが現状です。この仕組みが無いがゆえに、親自身も医療機関も、提供者が誰かわからない場合も少なくありません。そんな中2022年12月には、日本国内の精子提供や卵子提供で生まれた人と過去に精子や卵子を提供した人を結び付けることを通して、自己の遺伝情報を知る権利の重要性を啓発し、提供型生殖補助医療の抱える課題の解決を目指す「一般社団法人ドナーリンク・ジャパン」という法人が設立されました。我が国においても「出自を知る権利」を保証するよう求める声が上がってきています。繰り返しになりますが、親自身も医療機関も提供者が誰かわからない場合でも、生まれた子どもに幼少期から正直に、提供で生まれたことを話し続けることは、必要不可欠です。 「親になりたい」を叶えるもう一つの選択肢「里親制度と養子縁組」―あなたらしい家族を見つけませんか ① 不妊治療の先の選択肢 世界保健機関(WHO)は、世界全体で成人の約6人に1人が不妊を経験していると発表しました(2023年4月)。不妊治療をしたにもかかわらず実子を得ることができなかったご夫婦は、子どもを産んで「親になる」という青写真が否定される現実に直面します。近年の治療技術の急速な発達と治療方法の拡大は、治療に通えば子供が授かるといった思い込みを、不妊当事者を含む社会一般に植え付けている面があります(安田・山田,2008)。不妊治療をしてなかなか子どもが授からなくても治療のやめ時を決められず、年齢を重ねていくご夫婦は決して少なくありません。社会に根深くある血縁主義の家族観の中で不妊治療以外に家族を作る選択肢があることに目を向けることができなくなっているのかもしれません。 ② 里親制度や養子縁組で子どもを育てる「親になる」 日本ではこれまで、実親の元で暮らすことができない「社会的養護」が必要な子どもの多くは、乳児院や児童養護施設での施設養護で暮らしていました。しかし家庭環境の中で特定の養育者に育てられることが、子どもの心身の健康な育ちに有益であることが認められてきました。里親制度は児童福祉法で規定された制度で、いろいろな事情で実親の元で育つことができない子どもをある一定期間家庭で養育する制度です。養子制度は民法により実親が育てられない子どもを縁組することによって法律上でも親子となる制度です。「新しい社会的養育ビジョン」(2017)では、乳幼児には原則家庭養育を徹底することや里親委託の推進など、子どもたちが家庭養育で育つことができるようより一層力を入れるよう示しました。里親や養親になったご夫婦の多くは、子どもを育てることの意味、今後の家族のあり方を真剣に話し合った上で意識的に「親になる」ことを選択した夫婦といえます。不妊治療、里親制度、養子縁組など多様な選択肢から夫婦にとって望ましい家族の形を選び、幸せな家庭を作っていくことが大事なのではないでしょうか。 【文:精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会】 「精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会」とは提供精子により生まれた人と研究者からなるグループで、提供精子・卵子により生まれた人へのサポートの手段として、社会的養護の分野で広がっているライフストーリーワークを応用する方法を検討しています。ライフストーリーワークは、サポーターとともに、これまでの人生を振り返り、整理するソーシャルワークの技法です。提供精子・卵子により生まれた方の置かれている状況やライフストーリーワークについての講座を実施しています。詳細は、研究会HPをご参照ください。
2023.06.08 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談からだの基礎知識
女性のからだ 女性の月経と排卵が起こるサイクルには、さまざまな性ホルモンが関与しています。ホルモンは外界と通じていない血液の中に分泌されることから「内分泌」といいます。月経と排卵はこの内分泌のしくみによって起こります。性ホルモンを分泌する司令塔は、脳の中にある「視床下部」と「下垂体」で、連携しながらホルモンの流れを司っています。月経の頃に下垂体から分泌されるホルモンが卵巣を刺激することで、約2週間かけて排卵へと向かっていきます。 ■ 女性のからだについて詳しくはコチラ>> 男性のからだ 陰茎の下にある陰嚢の中には、精子をつくる「精巣」があります。「睾丸」ともいいますが、女性の「卵巣」に対応する名称として、最近は精巣と呼ぶことが多くなっています。精巣の中には「精細管」という細い管があり、精子はこの中でつくられます。精細管の中には、胎児のときから、精子のもとになる精祖細胞があり、思春期になると、精祖細胞から精母細胞がつくられ、さらに精母細胞は精子細胞となります。この精子細胞が成熟して、頭と尾のある精子となります。精子の発生には、性ホルモンが大きく関わっています。性ホルモンの流れをつかさどっているのは、女性と同様、脳の視床下部と下垂体です。まず、視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)が分泌されて下垂体を刺激し、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌するよう指令を出します。黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)は、精巣内にある2種類の細胞を別々に刺激します。黄体化ホルモン(LH)による刺激を受けて、精巣では男性ホルモン(テストステロン)がつくられます。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、男性ホルモン(テストステロン)とともに、精子の発生を促します。 ■ 男性のからだについて詳しくはコチラ>> 性分化の過程 ~男あるいは女に発育していく過程~ 男女の性は、受精によって決定するわけではありません。受精によってつくられた「胎児原基」は、どちらの性にも発育できる特徴を持っています。男女の性が決定するには、性染色体の遺伝子に始まり、思春期あるいは青年期まで続く性分化の過程があります。これらすべてが、女性なら女性、男性なら男性と一致して初めて、男女が決定されます。 ■ 性分化の過程について詳しくはコチラ>>
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談女性のからだ
性ホルモンと排卵のしくみ 女性の月経と排卵が起こるサイクルには、さまざまな性ホルモンが関与しています。ホルモンは外界と通じていない血液の中に分泌されることから「内分泌」といいます。月経と排卵はこの内分泌のしくみによって起こります。性ホルモンを分泌する司令塔は、脳の中にある「視床下部」と「下垂体」で、連携しながらホルモンの流れを司っています。月経の頃に下垂体から分泌されるホルモンが卵巣を刺激することで、約2週間かけて排卵へと向かっていきます。 視床下部脳の視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)が分泌され、下垂体に指令を出します。 下垂体視床下部からの刺激をうけて、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を分泌し、卵巣を刺激します。卵巣刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を合わせてゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)と呼びます。 卵巣卵巣刺激ホルモン(FSH)は、卵巣の中に蓄えられている卵胞に働いて、そのうちいくつかを成熟させます。その中の1個だけが成熟して主席卵胞となり、約2週間かけて成長していき、残りの卵胞は委縮していきます。これらの卵胞は、卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌します。卵胞ホルモン(エストロゲン)は排卵が近づくにつれ急激に増加し、これにより卵胞が成熟したことを感知した視床下部は再び下垂体に指令を出し、大量の黄体化ホルモン(LH)を一気に分泌させます(これを「LHサージ」とよびます)。LHサージ開始により卵巣が刺激され、卵子が成熟して、卵胞と卵巣の壁を破って飛び出します。すなわち「排卵」が起こります。排卵後に卵巣に残された卵胞は、「黄体」という内分泌組織に変化します。黄体は黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌し、子宮内膜に働きかけて内膜を厚くし、受精卵が子宮内に着床しやすい状態に整えます。なお、「黄体」は、色が黄色であることが名前の由来となっています。 妊娠のしくみ 卵巣から排卵された卵子は、卵管に自動的に入っていくわけではなく、体内のさまざまな臓器をおさめている「腹腔」という大きな袋の中へと飛び出していきます。それを、「卵管采」という器官がキャッチして、卵管の中へと取り込みます。卵子は卵管采の奥の「卵管膨大部」という場所で精子の到着を待ち、ここで受精が行われます。一方の精子は、膣、子宮口を通って、自力で卵管にやってきます。多数の精子が卵子と受精を試みますが、卵子を取り囲む透明帯を通過できるのは1個だけです。透明帯を通過した精子の頭部が卵子に接着し、受精が完了します。受精卵は細胞分裂をくり返し(これを「分割」といいます)、「胚」という状態となって、卵管の中を線毛運動(卵管の内側にある細かい毛の動き)と蠕動運動(卵管自体の筋肉の収縮)という2つの運動によって子宮に向かって移動し、4~5日かけて子宮に到達します。子宮に到着した受精卵は、すでに胎盤の元となる細胞や胎児になる細胞、液体にみちた腔をもつ「胚盤胞」となっています。この胚盤胞が透明帯から脱出して、子宮内膜の中にもぐり込んで着床し、妊娠が成立します。卵子が受精能をもつ期間は短く、およそ24時間です。また、精子が受精能を有するのは通常48時間から72時間ほどです。卵子と精子にはそれぞれ寿命があるため、受精を成立させるには性交のタイミングがきわめて重要となります。また、妊娠するまでには、排卵⇒受精⇒分割⇒着床という流れがあります。その流れがどこかでつまづくと、次の過程に進むことができません。それぞれの段階では、卵子や精子、男女の生殖器やホルモンなどが密接に関わり合いながら、独自の役割を果たしていますが、各々の機能が十分に発揮されなければ、妊娠という結果をえることはできません。 子宮の構造と機能 子宮は、「子宮体部」と「子宮頸部」からなっており、通常の子宮は鶏卵ぐらいの大きさです。子宮頸部は膣と接しており、その内腔の細い管の部分を「子宮頸管」といいます。排卵の前に「頸管粘液」を分泌して精子を通過しやすくさせる機能を持っています。子宮体部の内側を覆っているのが「子宮内膜」で、周期的に変化しています。卵巣刺激ホルモン(FSH)の働きで卵胞から卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されると、子宮内膜が増殖を開始します。これは月経初日から14日目頃の排卵日まで続き、この期間は「増殖期」とよばれます。排卵を契機に卵巣の黄体からは黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、子宮内膜は14日間程度の「分泌期」に変わり、次第に厚みを増して着床の準備を整えます。排卵の後、卵子が受精しなければ黄体は退化します。黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌も減少し、子宮内膜の血管に変化がおこって血液の供給がとまり、子宮内膜ははがれ落ちます。これが次の月経のはじまりです。 月経のしくみ 妊娠が成立しなかった場合、厚くなった子宮内膜は剥がれ落ち、血液とともに体外に流れ出ます。この現象が「月経」です。月経が始まった日から、次の月経が始まる前日までを「月経周期」といい、通常は25~35日ぐらいの周期で繰り返されます。月経周期は、月経後から排卵までの「卵胞期」、排卵が起こる「排卵期」、排卵後から次の月経が始まるまでの「黄体期」、月経が起こる「月経期」の4つに分けられます。月経周期の卵胞期は子宮内膜の増殖期に相当し、月経周期の黄体期は子宮内膜の分泌期に相当します。卵巣機能が衰退し、ホルモンの分泌が減少すると、月経が永久に停止します。これを「閉経」といいます。 基礎体温について 体の動きが最も安静な状態にあるときの体温を「基礎体温」といいます。それをグラフ化した基礎体温表を観察すると、排卵の有無や卵巣の働き、ホルモンのバランスなどがある程度わかります。基礎体温は、毎朝目覚めたらすぐ、布団に入ったまま、少数第2位まで測定できる婦人体温計を使って口の中で測定します。健康な女性の基礎体温は、月経や排卵といった周期にしたがって低温期と高温期の二相性を示します。高温期が17日以上持続する場合は、妊娠の可能性があり、高温相が10日以内で不安定の場合は「黄体機能不全」、高温相がなく一相性の場合は「無排卵」の可能性があります。なお、基礎体温表のみで排卵日を確定することは困難です。 妊孕性について 「妊孕性」(にんようせい)とは、妊娠のしやすさのことをいいます。女性は産まれた時には、両側の卵巣に約200万個の原始卵胞を持っていますが、その後新しく作られることはありません。排卵の始まる思春期の頃には40~50万個、40歳頃には数千個まで減少するといわれます。また、新しく作られないということは、年齢を経てから排卵される卵子はそれだけ年数をへた卵子ということになり、加齢によって卵子の数だけでなく、卵子の質も低下していくと考えられています。このようなことから、加齢とともに妊孕性は低下していきますが、35歳を過ぎるとその傾向は加速します。また、流産の頻度も加齢とともに増加します。母体年齢から流産率をみると30歳前半で約15%、30歳後半では17~18%、40歳では25~30%と報告されています。これは、女性の体の中で起きる自然淘汰といえます。流産の80%は染色体異常が原因で起こりますが、加齢に伴う卵子の老化によって染色体異常が起こりやすくなり、着床前に死滅したり、着床後に発生が止まり流産となったり、先天異常率が上昇すると考えられています。近年、生殖補助医療(ART)を受ける患者数は増加し、40歳以上の患者の占める割合も増加傾向です。しかし、年齢と妊娠率に関して検討すると、妊娠率・生産率は35歳頃より下降が進み、40歳を超えると急激に下降しています。一方、流産率は40歳を超えると急激に上昇し、45歳以上では、妊娠率は5%以下、生産率はさらに低く、流産率は60%となっており、生殖補助医療(ART)によっても、加齢による妊孕性の低下は避けられないことがわかります。 【引用・参考文献】*久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル.不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会*峰克也他(2012):女性の年齢と妊孕性 卵のエイジング 特集 不妊と周産期医療.周産期医学, vol.42, No8*日本産科婦人科学会ホームページ:ARTデータブック2011(アクセス:2013.11)
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談男性のからだ
精子ができるしくみ 陰茎の下にある陰嚢の中には、精子をつくる「精巣」があります。「睾丸」ともいいますが、女性の「卵巣」に対応する名称として、最近は精巣と呼ぶことが多くなっています。精巣の中には「精細管」という細い管があり、精子はこの中でつくられます。精細管の中には、胎児のときから、精子のもとになる精祖細胞があり、思春期になると、精祖細胞から精母細胞がつくられ、さらに精母細胞は精子細胞となります。この精子細胞が成熟して、頭と尾のある精子となります。精子の発生には、性ホルモンが大きく関わっています。性ホルモンの流れをつかさどっているのは、女性と同様、脳の視床下部と下垂体です。まず、視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)が分泌されて下垂体を刺激し、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌するよう指令を出します。黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)は、精巣内にある2種類の細胞を別々に刺激します。黄体化ホルモン(LH)による刺激を受けて、精巣では男性ホルモン(テストステロン)がつくられます。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、男性ホルモン(テストステロン)とともに、精子の発生を促します。 精巣の機能 精巣には、精子をつくり、男性ホルモン(テストステロン)を分泌するという2つの役割があります。精巣は非常に血行がよく、また温度の変化や圧迫、外傷に敏感です。精巣は体温より少し低い温度で最もよく働くようにできています。陰嚢が体の下にぶら下がっているのは、精巣の温度を少し下げるためなのです。陰嚢の温度が下がりすぎたときには陰嚢の中の筋肉が収縮して精巣を体の中に引き上げて精巣の温度が下がりすぎないように自動的に調節します。 精子の流れ 精巣でつくられた精子は、「精巣上体」と呼ばれる管に蓄えられます。そこで精子は運動能力と受精能力を獲得します。性的刺激により脳から指令が出されると、精子は「精管」に押し出され、「精管膨大部」へと運ばれます。その後、「精嚢」や「前立腺」からの分泌液と混じって精液となり、尿道から体外へと放出されます。この現象が「射精」です。1回の射精で排出される精液は約2~5mlですが、その中に占める精子の割合は約1%に過ぎません。しかし、数としては2~3億個にも達します。しかし、最終的に卵子に侵入することができるのは、そのうちの1個だけです。精子は、卵子とは異なり、思春期以降はつねに新しく作られ続けます。健康な男子では1日に約1億個の精子がつくりだされ、生涯で1兆個の産生があるとされています。また、精祖細胞から精子がつくられるのにかかる期間は74日間というわずかな期間であることから、加齢による影響は少ないとされています。しかし、加齢とともに精巣の大きさも少しずつ小さくなり、男性ホルモンをつくる力も緩やかに低下することから、少しずつその機能は低下します。 【引用・参考文献】 *久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル.不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会*日本生殖医学会(2013):不妊症Q&A
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談性分化の過程 ~男あるいは女に発育していく過程~
男女の決定 男女の性は、受精によって決定するわけではありません。受精によってつくられた「胎児原基」は、どちらの性にも発育できる特徴を持っています。男女の性が決定するには、性染色体の遺伝子に始まり、思春期あるいは青年期まで続く性分化の過程があります。これらすべてが、女性なら女性、男性なら男性と一致して初めて、男女が決定されます。 (1)染色体による分化(遺伝子の性) ヒトの染色体は46本あり、2本組となって23対あります。そのうち性染色体は1対2本で、男性ではXとY、女性XとXとなっています。性染色体以外の22対44本は常染色体といいます。性の分化では、性染色体が重要な役割を果たします。生殖細胞である精子と卵子は、精巣あるいは卵巣において減数分裂という生殖細胞に特有な過程を経て、染色体数は半分の23本になります。 精子の染色体数:46,XY(44本の常染色体とXとYの2本の性染色体)【減数分裂により】23,X精子(22本の常染色体と1本のX性染色体)と23,Y精子(22本の常染色体と1本のY性染色体)になる。 卵子の染色体数:46,XX(44本の常染色体と2本のX性染色体)【減数分裂により】23,X卵子(22本の常染色体と1本のX性染色体)と23,X卵子(22本の常染色体と1本のX性染色体)になる。 最初の性分化は受精の際におこります。23,X卵子が、23,X精子または23,Y精子と受精することになり、23,X卵子と23,X精子が出会えば、受精卵は46,XXをもつ女性(遺伝的女性)になり、23,X卵子と23,Y精子が出会えば、受精卵は46,XYをもつ男性(遺伝的男性)になります。このように染色体による性は、Y染色体の有無により決定されます。Y染色体をもたなければ、X染色体の数にかかわらず女性になります。 なお、受精時やその後の異常のために性染色体がX1本となったり、XXYなど3本となるなどの異常が起こる場合もあります。 (2)性腺の分化(精巣と卵巣の分化) 性染色体によって遺伝的な性が決まっても、すぐに女性・男性になるわけではありません。次に性腺が卵巣か精巣かに分かれます。胎齢4~5週目には、性腺となる性腺原基が認められます。この中には後に卵子あるいは精子に発育していく原始生殖細胞も含まれています。性の分化では、この性腺原基が精巣と卵巣のどちらに分化するかが重要です。Y染色体には性腺を決める遺伝情報である「SRY遺伝子」があります。受精の際に性染色体が決まると、このSRY遺伝子が性腺原基を精巣に変化させます。Y染色体がなければSRY遺伝子も存在しないため、性腺原基は精巣には変化せず、自動的に卵巣になります。つまり、男性になるためには性腺を精巣にするSRY遺伝子が必要なのです。ただし、Y染色体があるのにSRY遺伝子が存在せず卵巣になったり、Y染色体がないのに精巣にする遺伝情報が紛れ込んで精巣になることもないわけではありません。 (3)内性器の分化 内性器とは、女性の卵管・子宮・膣、男性の精管・精嚢・前立腺をいいます。胎生6~7週目には、内性器の起源となる「ミューラー管」(卵管や子宮になる)と「ウォルフ管」(精管や精嚢になる)を2本ずつ持っています。性腺の分化で精巣が発育すると、胎生8週ころから機能し始め、精巣からミュラー管抑制因子(AMH)と男性ホルモン(テストステロン)が分泌されます。そのため、ミュラー管の発育を抑制することにより卵管や子宮はできなくなり、男性ホルモン(テストステロン)によりウォルフ管が発達して精管や精嚢ができます。一方、性腺の分化で卵巣になると、ミュラー管抑制因子(AMH)がないためミュラー管の発育は抑制されず、卵管や子宮ができ、男性ホルモン(テストステロン)が働かないためウォルフ管が発達せず精管や精嚢はできません。つまり、内性器の分化は基本が女性型であり、精巣からのミュラー管抑制因子(AMH)と男性ホルモン(テストステロン)がある場合のみ男性型になります。なお、卵巣の有無は内性器の発達には無関係です。 (4)外性器の分化 外性器とは、女性の陰核や陰唇など、男性の陰茎や陰嚢などをいいます。胎齢8週では、男女両性の外性器は全く同じで、どちらの性へも分化できる能力をもっています。性線の分化で精巣が発育した場合、男性ホルモン(テストステロン)によりに外性器は男性化し、陰茎や陰嚢などができます。一方、卵巣が発育した場合、男性ホルモン(テストステロン)が働かないため陰茎や陰嚢ができず、陰核や陰唇ができます。外性器の分化は胎生12週までに起こります。外性器の分化も、基本は女性型であり、男性ホルモン(テストステロン)がある場合のみ男性型になります。なお、卵巣の有無は外性器の発達にも無関係です。 (5)脳の分化 妊娠20週前後に男性ホルモン(テストステロン)が多いと脳の中にある性中枢が男性として認識し、出生以後も男性としての性行動を取ることになります。一方、その時期に男性ホルモン(テストステロン)が少ないと性中枢が女性として認識して、女性としての性行動をとることになります。この脳の性分化は、胎生90日頃までに決まります。脳の分化も、基本は女性型です。染色体・性腺・性器が男性でありながら、男性ホルモン(テストステロン)の量が少ないと、生まれてから男性としての性行動よりも女性としての性行動をとります。その逆も同じで、染色体・性腺・性器が女性でありながら、男性ホルモン(テストステロン)の量が多いと、生まれてから女性としての性行動よりも男性としての性行動を取ります。これらは、性同一性障害の典型例とされています。 (6)社会的な性(戸籍上の性) 生まれたときに外性器で性別を判断することが多く、このときに決定した性別が戸籍上の性となっています。しかし、誤った判断によりその後の一生が左右されることもあるため、陰核の肥大した女児であるのか、陰茎が小さい男児であるのかの判定に苦慮する場合は、染色体検査などが考慮されます。通常、戸籍上の性を変えることは困難ですが、特殊な例に限って変更できるようになってきています。 (7)精神・心理的な性(ジェンダー) 生まれてからは、男の子は男の子として、女の子は女の子として育てられ、本人もそのつもりになります。このように社会生活上の性により個人の内面で長年にわたって精神・心理的な性が培われていきます。このような性の社会的側面をジェンダーといいます (8)身体的な性 思春期になると性ホルモンにより外形的な身体つきが、男性らしく、女性らしくなります。まれに副腎ホルモンなどの影響を受けて、正常な発育が損なわれることもあります。 性分化の異常 性染色体、ホルモンなどのいずれかに異常があれば、性の分化は不完全となります。その代表例は以下のとおりです。 クラインフェルター症候群、ターナー症候群クラインフェルター症候群は47,XXY、ターナー症候群は45,Xの異常染色体を持っています。生殖細胞の減数分裂の過程で性染色体の分離がうまくいかなかったことが原因であることが多く、染色体の数に異常が生じたためです。いずれも性腺は未発達で、生殖機能を持たない場合があります。なお、ダウン症候群(21トリソミー)も、第21番常染色体が1本多い、常染色体の数の異常です。副腎性器症候群(先天性副腎過形成)女性の染色体(46,XX)を持ち、卵巣もありますが、外性器は男性型です。原因は副腎皮質酵素の先天的欠損により、下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌され、副腎が過形成を起こしてアンドロゲン(男性ホルモン。テストステロンもこの一種)を大量に分泌します。過剰なアンドロゲンのために外性器が男性型となります。精巣女性化症候群男性の染色体(46,XY)を持ち、精巣もありますが、外見は女性です。アンドロゲン受容体がないために男性化がおこらず、外性器や乳房はエストロゲンの影響を受けて女性型となります。先天性膣欠損症女性の染色体(46,XX)を持ち、卵巣も正常にあり、ホルモンの性状に分泌されていて、二次性徴も正常です。内性器の分化の異常で、内性器は、性腺や外性器よりも異常が起きやすいとされています。膣の外に近いごく一部(約2cm)は外性器とともに作られるため、先天性膣欠損の女性にもみられます。欠損の程度により「膣の一部欠損」「子宮・膣の欠損」「子宮・卵管・膣の欠損」に分かれます。 【引用・参考文献】*三宅婦人科内科医院ホームページ:「男女の決定」「性器の分化」「先天性膣欠損症」(アクセス:2013.11)*坂井建雄他(2008):カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版.日本医事新報社
2023.06.02 -
#不妊・不育の相談不妊の基礎知識
不妊とは 妊娠を希望しているカップルが、ある一定期間、性生活をもっているにもかかわらず妊娠しない状態を「不妊」といいます。不妊と定義される期間は、日本では2年以上とされてきましたが、この定義がなされた時代に比べ現代は晩産化が進んでおり、高齢になるほど妊娠しにくく、治療効果も得にくい傾向にあるため、妊娠の機会を逸しないよう、1年間妊娠しなければ検査や治療を始めることが一般的となっています。なお、妊娠を希望し、かつ、子どもを授かるために医学的な治療が必要とされる場合は「不妊症」と呼ばれます。また、たとえ不妊であっても、妊娠を望んでいないのなら、不妊としてとらえる必要はありません。 頻度 通常、生殖機能に問題のないカップルが妊娠を希望している場合、3カ月以内に50%、6カ月以内に70%、1年以内に80%、2年で約90%が妊娠します。そのため、2年たっても妊娠しないカップルが10%(10組に1組)の割合で存在するとされてきましたが、近年では7組に1組の割合に増えてきているといわれています。 原因 不妊の原因はさまざまにあります。原因の分類にはいくつかの分け方がありますが、不妊の原因がカップルのどちらにあるかという点では、男性に原因がある「男性因子」と、女性に問題がある「女性因子」に分けられます。 ■ 不妊の原因について詳しくはコチラ>> 検査 検査には、不妊の原因を探るための基本的な検査である「一般不妊検査」と、さらに詳しく調べる必要がある場合に行われる「特殊不妊検査」の2つに分けられます。女性の一般不妊検査は、月経周期に合わせて系統的に実施されるため、すべてを終了させるには最低でも2カ月くらいは必要です。場合によっては、全検査の終了を待たずに、不妊治療を開始することもあります。 ■ 不妊の検査について詳しくはコチラ>> 治療 不妊治療には、大きく分けて、タイミング法、薬物療法、手術療法、人工授精などの「一般不妊治療」と、体外受精、顕微授精など卵子や受精卵(胚)を体外で取り扱う「生殖補助医療(ART)」の2種類があります。不妊治療は通常、自然に近い方法からより高次の治療法へと、段階的に進んで行きますが、不妊の原因によっては初めから高度な治療を行う場合があります。生殖補助医療(ART)は一般不妊治療と比べて経済的負担が大きく、また肉体的負担も少なくありません。 ■ 不妊の治療について詳しくはコチラ>> さらに詳しい情報の入手先 ▼ 一般社団法人日本生殖医学会のサイト「不妊症Q&A」では、不妊に関する基礎知識がさらに詳しく掲載されています。一般社団法人日本生殖医学会 ▼ このほか、リンク集にも詳しく掲載しております。リンク集 【引用・参考文献】*久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル、不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会
2023.06.02 -
#不妊・不育の相談不妊の原因
不妊の原因はさまざまにあります。原因の分類にはいくつかの分け方がありますが、不妊の原因がカップルのどちらにあるかという点では、男性に原因がある「男性因子」と、女性に問題がある「女性因子」に分けられます。 女性因子(女性側の原因) 女性側の原因は以下の4つに大別されます。 排卵に問題がある「排卵因子」(内分泌因子ともいいます) 卵管に問題がある「卵管因子」 子宮に問題がある「子宮因子」 子宮頸管に問題がある「頸管因子」 (1)排卵因子(内分泌因子)卵子が育たない、育っても排出できないなど、排卵が正常に行われないために引き起こされる不妊を「排卵因子」の不妊といいます。排卵には、さまざまな性ホルモンの分泌(内分泌)が関与しているため、排卵因子を「内分泌因子」ともいいます。 視床下部性排卵障害(無排卵周期症、無月経症) 高プロラクチン血症 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) 黄体機能不全 (2)卵管因子卵子と精子の通り道である卵管が閉じていたり、狭くなっているなど卵管に問題があるために起こる不妊を「卵管因子」の不妊といいます。 クラミジア感染症 子宮内膜症 (3)子宮因子子宮に何らかの問題があり、着床しにくいことから起こる不妊を「子宮因子」の不妊といいます。 ・子宮筋腫 子宮腺筋症 子宮奇形 子宮内膜ポリープ (4)頸管因子子宮頸管から分泌され、精子を通過しやすくさせる頸管粘液の分泌量が少なく、精子の通過の妨げとなるなど頸管に問題があるために起こる不妊を「頸管因子」の不妊といいます。 頸管粘液分泌不全 頸管狭窄・閉塞 男性因子(男性側の原因) 男性側の原因は以下の4つに大別されます。 精子をつくる精巣に問題がある「造精機能障害」 精子の輸送路に問題がある「精路通過障害」 副性器(精巣上体、前立腺、精のう)に問題がある「副性器障害」 勃起や射精ができない「性機能障害」 (1)造精機能障害精子をつくる働きに障害があり、精子の数が少ない(乏精子症)、または無い(無精子症)、精子の運動性が低い(精子無力症)といった場合を「造精機能障害」といいます。 精索静脈瘤 クラインフェルター症候群 停留精巣 (2)精路通過障害精巣で精子がつくられていても、精子の輸送路(精路)がふさがっていたり、狭かったりすることで精子が先へ進めない場合を「精路通過障害」といいます。 精巣上体炎、精管炎(クラミジア感染症) 逆行性射精 (3)副性器機能障害副性器(精巣上体、前立腺、精のう)に何らかのトラブルがあり、精子の運動能力が低い場合を「副性器機能障害」といいます。 精のう炎、前立腺炎 (4)性機能障害精巣で精子が十分につくられており、精子の輸送路もふさがっていないが、勃起や射精などの性機能に問題があり、性交ができない場合を「性機能障害」といいます。 動脈硬化や高血圧、糖尿病 緊張、ストレス、失敗体験 免疫因子 代表的な疾患 (1)免疫因子頸管粘液の中に、精子を異物として認識して攻撃する「抗精子抗体」が存在することがあり、この抗体によって精子の働きが悪くなったり、動けなくなるなどして授精できない場合を「免疫性不妊」といいます。抗精子抗体は、自己抗体として男性の体からも検出される場合もあります。このような免疫反応を原因とする不妊は、男性因子・女性因子とは区別します。 抗精子抗体 抗透明帯抗体 (2)機能性不妊(原因不明)男女双方が検査を受けても、ともに異常が認められないこともあり、こうした場合を「機能性不妊」といい、不妊の約10~20%に相当するといわれています。
2023.06.02