column カラダと性の相談一覧
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#カラダと性の相談#不妊・不育の相談からだの基礎知識
女性のからだ 女性の月経と排卵が起こるサイクルには、さまざまな性ホルモンが関与しています。ホルモンは外界と通じていない血液の中に分泌されることから「内分泌」といいます。月経と排卵はこの内分泌のしくみによって起こります。性ホルモンを分泌する司令塔は、脳の中にある「視床下部」と「下垂体」で、連携しながらホルモンの流れを司っています。月経の頃に下垂体から分泌されるホルモンが卵巣を刺激することで、約2週間かけて排卵へと向かっていきます。 ■ 女性のからだについて詳しくはコチラ>> 男性のからだ 陰茎の下にある陰嚢の中には、精子をつくる「精巣」があります。「睾丸」ともいいますが、女性の「卵巣」に対応する名称として、最近は精巣と呼ぶことが多くなっています。精巣の中には「精細管」という細い管があり、精子はこの中でつくられます。精細管の中には、胎児のときから、精子のもとになる精祖細胞があり、思春期になると、精祖細胞から精母細胞がつくられ、さらに精母細胞は精子細胞となります。この精子細胞が成熟して、頭と尾のある精子となります。精子の発生には、性ホルモンが大きく関わっています。性ホルモンの流れをつかさどっているのは、女性と同様、脳の視床下部と下垂体です。まず、視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)が分泌されて下垂体を刺激し、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌するよう指令を出します。黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)は、精巣内にある2種類の細胞を別々に刺激します。黄体化ホルモン(LH)による刺激を受けて、精巣では男性ホルモン(テストステロン)がつくられます。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、男性ホルモン(テストステロン)とともに、精子の発生を促します。 ■ 男性のからだについて詳しくはコチラ>> 性分化の過程 ~男あるいは女に発育していく過程~ 男女の性は、受精によって決定するわけではありません。受精によってつくられた「胎児原基」は、どちらの性にも発育できる特徴を持っています。男女の性が決定するには、性染色体の遺伝子に始まり、思春期あるいは青年期まで続く性分化の過程があります。これらすべてが、女性なら女性、男性なら男性と一致して初めて、男女が決定されます。 ■ 性分化の過程について詳しくはコチラ>>
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談女性のからだ
性ホルモンと排卵のしくみ 女性の月経と排卵が起こるサイクルには、さまざまな性ホルモンが関与しています。ホルモンは外界と通じていない血液の中に分泌されることから「内分泌」といいます。月経と排卵はこの内分泌のしくみによって起こります。性ホルモンを分泌する司令塔は、脳の中にある「視床下部」と「下垂体」で、連携しながらホルモンの流れを司っています。月経の頃に下垂体から分泌されるホルモンが卵巣を刺激することで、約2週間かけて排卵へと向かっていきます。 視床下部脳の視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)が分泌され、下垂体に指令を出します。 下垂体視床下部からの刺激をうけて、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を分泌し、卵巣を刺激します。卵巣刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を合わせてゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)と呼びます。 卵巣卵巣刺激ホルモン(FSH)は、卵巣の中に蓄えられている卵胞に働いて、そのうちいくつかを成熟させます。その中の1個だけが成熟して主席卵胞となり、約2週間かけて成長していき、残りの卵胞は委縮していきます。これらの卵胞は、卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌します。卵胞ホルモン(エストロゲン)は排卵が近づくにつれ急激に増加し、これにより卵胞が成熟したことを感知した視床下部は再び下垂体に指令を出し、大量の黄体化ホルモン(LH)を一気に分泌させます(これを「LHサージ」とよびます)。LHサージ開始により卵巣が刺激され、卵子が成熟して、卵胞と卵巣の壁を破って飛び出します。すなわち「排卵」が起こります。排卵後に卵巣に残された卵胞は、「黄体」という内分泌組織に変化します。黄体は黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌し、子宮内膜に働きかけて内膜を厚くし、受精卵が子宮内に着床しやすい状態に整えます。なお、「黄体」は、色が黄色であることが名前の由来となっています。 妊娠のしくみ 卵巣から排卵された卵子は、卵管に自動的に入っていくわけではなく、体内のさまざまな臓器をおさめている「腹腔」という大きな袋の中へと飛び出していきます。それを、「卵管采」という器官がキャッチして、卵管の中へと取り込みます。卵子は卵管采の奥の「卵管膨大部」という場所で精子の到着を待ち、ここで受精が行われます。一方の精子は、膣、子宮口を通って、自力で卵管にやってきます。多数の精子が卵子と受精を試みますが、卵子を取り囲む透明帯を通過できるのは1個だけです。透明帯を通過した精子の頭部が卵子に接着し、受精が完了します。受精卵は細胞分裂をくり返し(これを「分割」といいます)、「胚」という状態となって、卵管の中を線毛運動(卵管の内側にある細かい毛の動き)と蠕動運動(卵管自体の筋肉の収縮)という2つの運動によって子宮に向かって移動し、4~5日かけて子宮に到達します。子宮に到着した受精卵は、すでに胎盤の元となる細胞や胎児になる細胞、液体にみちた腔をもつ「胚盤胞」となっています。この胚盤胞が透明帯から脱出して、子宮内膜の中にもぐり込んで着床し、妊娠が成立します。卵子が受精能をもつ期間は短く、およそ24時間です。また、精子が受精能を有するのは通常48時間から72時間ほどです。卵子と精子にはそれぞれ寿命があるため、受精を成立させるには性交のタイミングがきわめて重要となります。また、妊娠するまでには、排卵⇒受精⇒分割⇒着床という流れがあります。その流れがどこかでつまづくと、次の過程に進むことができません。それぞれの段階では、卵子や精子、男女の生殖器やホルモンなどが密接に関わり合いながら、独自の役割を果たしていますが、各々の機能が十分に発揮されなければ、妊娠という結果をえることはできません。 子宮の構造と機能 子宮は、「子宮体部」と「子宮頸部」からなっており、通常の子宮は鶏卵ぐらいの大きさです。子宮頸部は膣と接しており、その内腔の細い管の部分を「子宮頸管」といいます。排卵の前に「頸管粘液」を分泌して精子を通過しやすくさせる機能を持っています。子宮体部の内側を覆っているのが「子宮内膜」で、周期的に変化しています。卵巣刺激ホルモン(FSH)の働きで卵胞から卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されると、子宮内膜が増殖を開始します。これは月経初日から14日目頃の排卵日まで続き、この期間は「増殖期」とよばれます。排卵を契機に卵巣の黄体からは黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、子宮内膜は14日間程度の「分泌期」に変わり、次第に厚みを増して着床の準備を整えます。排卵の後、卵子が受精しなければ黄体は退化します。黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌も減少し、子宮内膜の血管に変化がおこって血液の供給がとまり、子宮内膜ははがれ落ちます。これが次の月経のはじまりです。 月経のしくみ 妊娠が成立しなかった場合、厚くなった子宮内膜は剥がれ落ち、血液とともに体外に流れ出ます。この現象が「月経」です。月経が始まった日から、次の月経が始まる前日までを「月経周期」といい、通常は25~35日ぐらいの周期で繰り返されます。月経周期は、月経後から排卵までの「卵胞期」、排卵が起こる「排卵期」、排卵後から次の月経が始まるまでの「黄体期」、月経が起こる「月経期」の4つに分けられます。月経周期の卵胞期は子宮内膜の増殖期に相当し、月経周期の黄体期は子宮内膜の分泌期に相当します。卵巣機能が衰退し、ホルモンの分泌が減少すると、月経が永久に停止します。これを「閉経」といいます。 基礎体温について 体の動きが最も安静な状態にあるときの体温を「基礎体温」といいます。それをグラフ化した基礎体温表を観察すると、排卵の有無や卵巣の働き、ホルモンのバランスなどがある程度わかります。基礎体温は、毎朝目覚めたらすぐ、布団に入ったまま、少数第2位まで測定できる婦人体温計を使って口の中で測定します。健康な女性の基礎体温は、月経や排卵といった周期にしたがって低温期と高温期の二相性を示します。高温期が17日以上持続する場合は、妊娠の可能性があり、高温相が10日以内で不安定の場合は「黄体機能不全」、高温相がなく一相性の場合は「無排卵」の可能性があります。なお、基礎体温表のみで排卵日を確定することは困難です。 妊孕性について 「妊孕性」(にんようせい)とは、妊娠のしやすさのことをいいます。女性は産まれた時には、両側の卵巣に約200万個の原始卵胞を持っていますが、その後新しく作られることはありません。排卵の始まる思春期の頃には40~50万個、40歳頃には数千個まで減少するといわれます。また、新しく作られないということは、年齢を経てから排卵される卵子はそれだけ年数をへた卵子ということになり、加齢によって卵子の数だけでなく、卵子の質も低下していくと考えられています。このようなことから、加齢とともに妊孕性は低下していきますが、35歳を過ぎるとその傾向は加速します。また、流産の頻度も加齢とともに増加します。母体年齢から流産率をみると30歳前半で約15%、30歳後半では17~18%、40歳では25~30%と報告されています。これは、女性の体の中で起きる自然淘汰といえます。流産の80%は染色体異常が原因で起こりますが、加齢に伴う卵子の老化によって染色体異常が起こりやすくなり、着床前に死滅したり、着床後に発生が止まり流産となったり、先天異常率が上昇すると考えられています。近年、生殖補助医療(ART)を受ける患者数は増加し、40歳以上の患者の占める割合も増加傾向です。しかし、年齢と妊娠率に関して検討すると、妊娠率・生産率は35歳頃より下降が進み、40歳を超えると急激に下降しています。一方、流産率は40歳を超えると急激に上昇し、45歳以上では、妊娠率は5%以下、生産率はさらに低く、流産率は60%となっており、生殖補助医療(ART)によっても、加齢による妊孕性の低下は避けられないことがわかります。 【引用・参考文献】*久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル.不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会*峰克也他(2012):女性の年齢と妊孕性 卵のエイジング 特集 不妊と周産期医療.周産期医学, vol.42, No8*日本産科婦人科学会ホームページ:ARTデータブック2011(アクセス:2013.11)
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談男性のからだ
精子ができるしくみ 陰茎の下にある陰嚢の中には、精子をつくる「精巣」があります。「睾丸」ともいいますが、女性の「卵巣」に対応する名称として、最近は精巣と呼ぶことが多くなっています。精巣の中には「精細管」という細い管があり、精子はこの中でつくられます。精細管の中には、胎児のときから、精子のもとになる精祖細胞があり、思春期になると、精祖細胞から精母細胞がつくられ、さらに精母細胞は精子細胞となります。この精子細胞が成熟して、頭と尾のある精子となります。精子の発生には、性ホルモンが大きく関わっています。性ホルモンの流れをつかさどっているのは、女性と同様、脳の視床下部と下垂体です。まず、視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)が分泌されて下垂体を刺激し、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌するよう指令を出します。黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)は、精巣内にある2種類の細胞を別々に刺激します。黄体化ホルモン(LH)による刺激を受けて、精巣では男性ホルモン(テストステロン)がつくられます。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、男性ホルモン(テストステロン)とともに、精子の発生を促します。 精巣の機能 精巣には、精子をつくり、男性ホルモン(テストステロン)を分泌するという2つの役割があります。精巣は非常に血行がよく、また温度の変化や圧迫、外傷に敏感です。精巣は体温より少し低い温度で最もよく働くようにできています。陰嚢が体の下にぶら下がっているのは、精巣の温度を少し下げるためなのです。陰嚢の温度が下がりすぎたときには陰嚢の中の筋肉が収縮して精巣を体の中に引き上げて精巣の温度が下がりすぎないように自動的に調節します。 精子の流れ 精巣でつくられた精子は、「精巣上体」と呼ばれる管に蓄えられます。そこで精子は運動能力と受精能力を獲得します。性的刺激により脳から指令が出されると、精子は「精管」に押し出され、「精管膨大部」へと運ばれます。その後、「精嚢」や「前立腺」からの分泌液と混じって精液となり、尿道から体外へと放出されます。この現象が「射精」です。1回の射精で排出される精液は約2~5mlですが、その中に占める精子の割合は約1%に過ぎません。しかし、数としては2~3億個にも達します。しかし、最終的に卵子に侵入することができるのは、そのうちの1個だけです。精子は、卵子とは異なり、思春期以降はつねに新しく作られ続けます。健康な男子では1日に約1億個の精子がつくりだされ、生涯で1兆個の産生があるとされています。また、精祖細胞から精子がつくられるのにかかる期間は74日間というわずかな期間であることから、加齢による影響は少ないとされています。しかし、加齢とともに精巣の大きさも少しずつ小さくなり、男性ホルモンをつくる力も緩やかに低下することから、少しずつその機能は低下します。 【引用・参考文献】 *久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル.不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会*日本生殖医学会(2013):不妊症Q&A
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談性分化の過程 ~男あるいは女に発育していく過程~
男女の決定 男女の性は、受精によって決定するわけではありません。受精によってつくられた「胎児原基」は、どちらの性にも発育できる特徴を持っています。男女の性が決定するには、性染色体の遺伝子に始まり、思春期あるいは青年期まで続く性分化の過程があります。これらすべてが、女性なら女性、男性なら男性と一致して初めて、男女が決定されます。 (1)染色体による分化(遺伝子の性) ヒトの染色体は46本あり、2本組となって23対あります。そのうち性染色体は1対2本で、男性ではXとY、女性XとXとなっています。性染色体以外の22対44本は常染色体といいます。性の分化では、性染色体が重要な役割を果たします。生殖細胞である精子と卵子は、精巣あるいは卵巣において減数分裂という生殖細胞に特有な過程を経て、染色体数は半分の23本になります。 精子の染色体数:46,XY(44本の常染色体とXとYの2本の性染色体)【減数分裂により】23,X精子(22本の常染色体と1本のX性染色体)と23,Y精子(22本の常染色体と1本のY性染色体)になる。 卵子の染色体数:46,XX(44本の常染色体と2本のX性染色体)【減数分裂により】23,X卵子(22本の常染色体と1本のX性染色体)と23,X卵子(22本の常染色体と1本のX性染色体)になる。 最初の性分化は受精の際におこります。23,X卵子が、23,X精子または23,Y精子と受精することになり、23,X卵子と23,X精子が出会えば、受精卵は46,XXをもつ女性(遺伝的女性)になり、23,X卵子と23,Y精子が出会えば、受精卵は46,XYをもつ男性(遺伝的男性)になります。このように染色体による性は、Y染色体の有無により決定されます。Y染色体をもたなければ、X染色体の数にかかわらず女性になります。 なお、受精時やその後の異常のために性染色体がX1本となったり、XXYなど3本となるなどの異常が起こる場合もあります。 (2)性腺の分化(精巣と卵巣の分化) 性染色体によって遺伝的な性が決まっても、すぐに女性・男性になるわけではありません。次に性腺が卵巣か精巣かに分かれます。胎齢4~5週目には、性腺となる性腺原基が認められます。この中には後に卵子あるいは精子に発育していく原始生殖細胞も含まれています。性の分化では、この性腺原基が精巣と卵巣のどちらに分化するかが重要です。Y染色体には性腺を決める遺伝情報である「SRY遺伝子」があります。受精の際に性染色体が決まると、このSRY遺伝子が性腺原基を精巣に変化させます。Y染色体がなければSRY遺伝子も存在しないため、性腺原基は精巣には変化せず、自動的に卵巣になります。つまり、男性になるためには性腺を精巣にするSRY遺伝子が必要なのです。ただし、Y染色体があるのにSRY遺伝子が存在せず卵巣になったり、Y染色体がないのに精巣にする遺伝情報が紛れ込んで精巣になることもないわけではありません。 (3)内性器の分化 内性器とは、女性の卵管・子宮・膣、男性の精管・精嚢・前立腺をいいます。胎生6~7週目には、内性器の起源となる「ミューラー管」(卵管や子宮になる)と「ウォルフ管」(精管や精嚢になる)を2本ずつ持っています。性腺の分化で精巣が発育すると、胎生8週ころから機能し始め、精巣からミュラー管抑制因子(AMH)と男性ホルモン(テストステロン)が分泌されます。そのため、ミュラー管の発育を抑制することにより卵管や子宮はできなくなり、男性ホルモン(テストステロン)によりウォルフ管が発達して精管や精嚢ができます。一方、性腺の分化で卵巣になると、ミュラー管抑制因子(AMH)がないためミュラー管の発育は抑制されず、卵管や子宮ができ、男性ホルモン(テストステロン)が働かないためウォルフ管が発達せず精管や精嚢はできません。つまり、内性器の分化は基本が女性型であり、精巣からのミュラー管抑制因子(AMH)と男性ホルモン(テストステロン)がある場合のみ男性型になります。なお、卵巣の有無は内性器の発達には無関係です。 (4)外性器の分化 外性器とは、女性の陰核や陰唇など、男性の陰茎や陰嚢などをいいます。胎齢8週では、男女両性の外性器は全く同じで、どちらの性へも分化できる能力をもっています。性線の分化で精巣が発育した場合、男性ホルモン(テストステロン)によりに外性器は男性化し、陰茎や陰嚢などができます。一方、卵巣が発育した場合、男性ホルモン(テストステロン)が働かないため陰茎や陰嚢ができず、陰核や陰唇ができます。外性器の分化は胎生12週までに起こります。外性器の分化も、基本は女性型であり、男性ホルモン(テストステロン)がある場合のみ男性型になります。なお、卵巣の有無は外性器の発達にも無関係です。 (5)脳の分化 妊娠20週前後に男性ホルモン(テストステロン)が多いと脳の中にある性中枢が男性として認識し、出生以後も男性としての性行動を取ることになります。一方、その時期に男性ホルモン(テストステロン)が少ないと性中枢が女性として認識して、女性としての性行動をとることになります。この脳の性分化は、胎生90日頃までに決まります。脳の分化も、基本は女性型です。染色体・性腺・性器が男性でありながら、男性ホルモン(テストステロン)の量が少ないと、生まれてから男性としての性行動よりも女性としての性行動をとります。その逆も同じで、染色体・性腺・性器が女性でありながら、男性ホルモン(テストステロン)の量が多いと、生まれてから女性としての性行動よりも男性としての性行動を取ります。これらは、性同一性障害の典型例とされています。 (6)社会的な性(戸籍上の性) 生まれたときに外性器で性別を判断することが多く、このときに決定した性別が戸籍上の性となっています。しかし、誤った判断によりその後の一生が左右されることもあるため、陰核の肥大した女児であるのか、陰茎が小さい男児であるのかの判定に苦慮する場合は、染色体検査などが考慮されます。通常、戸籍上の性を変えることは困難ですが、特殊な例に限って変更できるようになってきています。 (7)精神・心理的な性(ジェンダー) 生まれてからは、男の子は男の子として、女の子は女の子として育てられ、本人もそのつもりになります。このように社会生活上の性により個人の内面で長年にわたって精神・心理的な性が培われていきます。このような性の社会的側面をジェンダーといいます (8)身体的な性 思春期になると性ホルモンにより外形的な身体つきが、男性らしく、女性らしくなります。まれに副腎ホルモンなどの影響を受けて、正常な発育が損なわれることもあります。 性分化の異常 性染色体、ホルモンなどのいずれかに異常があれば、性の分化は不完全となります。その代表例は以下のとおりです。 クラインフェルター症候群、ターナー症候群クラインフェルター症候群は47,XXY、ターナー症候群は45,Xの異常染色体を持っています。生殖細胞の減数分裂の過程で性染色体の分離がうまくいかなかったことが原因であることが多く、染色体の数に異常が生じたためです。いずれも性腺は未発達で、生殖機能を持たない場合があります。なお、ダウン症候群(21トリソミー)も、第21番常染色体が1本多い、常染色体の数の異常です。副腎性器症候群(先天性副腎過形成)女性の染色体(46,XX)を持ち、卵巣もありますが、外性器は男性型です。原因は副腎皮質酵素の先天的欠損により、下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌され、副腎が過形成を起こしてアンドロゲン(男性ホルモン。テストステロンもこの一種)を大量に分泌します。過剰なアンドロゲンのために外性器が男性型となります。精巣女性化症候群男性の染色体(46,XY)を持ち、精巣もありますが、外見は女性です。アンドロゲン受容体がないために男性化がおこらず、外性器や乳房はエストロゲンの影響を受けて女性型となります。先天性膣欠損症女性の染色体(46,XX)を持ち、卵巣も正常にあり、ホルモンの性状に分泌されていて、二次性徴も正常です。内性器の分化の異常で、内性器は、性腺や外性器よりも異常が起きやすいとされています。膣の外に近いごく一部(約2cm)は外性器とともに作られるため、先天性膣欠損の女性にもみられます。欠損の程度により「膣の一部欠損」「子宮・膣の欠損」「子宮・卵管・膣の欠損」に分かれます。 【引用・参考文献】*三宅婦人科内科医院ホームページ:「男女の決定」「性器の分化」「先天性膣欠損症」(アクセス:2013.11)*坂井建雄他(2008):カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版.日本医事新報社
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談妊娠を妨げる病気
排卵障害をおこす疾患(内分泌異常) ゴナドトロピン放出ホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン:GnRH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)などのホルモンは密接に連携しながら排卵や卵巣からのホルモン分泌の調整を行いますが、その分泌に異常があると、排卵障害や着床障害につながります。なお、若い女性でも卵巣機能が低下して原始卵胞の数が少なくなり、このために排卵しない場合もあります。これを「早発閉経症」といいます。また、副腎皮質や甲状腺の機能の異常が原因で排卵障害がおこるケースもあります。 ■ 排卵障害をおこす疾患(内分泌異常)について詳しくはコチラ>> 卵管障害をおこす疾患 卵管障害には、卵管采に癒着があって卵子を取り込めない「ピックアップ障害」や、卵管内の通過性に問題がある「卵管通過障害」などがあります。卵管にトラブルが発生しやすいのは、女性の生殖器の中で最も粘膜が薄いため、虫垂炎や性感染症(STD)などにより炎症を起こしやすく、この後遺症として癒着や閉塞などを招きやすいためです。近年は、クラミジア感染による卵管障害が増加しています。また、子宮内膜症により卵管周囲癒着が起こることも少なくありません。 ■ 卵管障害をおこす疾患について詳しくはコチラ>> 着床障害をおこす疾患 子宮に異常があれば着床障害を引き起こし、不妊の原因になります。子宮因子となりうる主な疾患には、様々なものがあります。 ■ 着床障害をおこす疾患について詳しくはコチラ>> 子宮頸管に関する疾患 頸管、頸管粘液の状態による精子の通過がさまたげられるために妊娠が成立しない場合があります。 ■ 子宮頸管に関する疾患について詳しくはコチラ>> 造精機能障害をおこす疾患 精子をつくる働きの障害には以下のようなものがあります。しかし、原因不明の突発性造精機能障害が約60%を占めるといわれています。また、精巣炎も原因となる場合があります。 ■ 造精機能障害をおこす疾患について詳しくはコチラ>> 精路通過障害をおこす疾患 精子の輸送路(精路)に異常をきたすことで射精をさまたげ、不妊の原因となる場合があります。 ■ 精路通過障害をおこす疾患について詳しくはコチラ>> 性機能障害の主な疾患 精巣で精子が十分につくられており、精子の輸送路もふさがっていないが、勃起や射精などの性機能に問題があり、性交ができない場合を「性機能障害」といいます。 ■ 性機能障害の主な疾患について詳しくはコチラ>> 免疫因子 免疫反応が原因となり、受精や着床をさまたげることがあります。身体の防御機能が本来害ではないものに対して過剰に反応し、排出しようとする免疫機能の異常は、卵子や精子に対しても起こることがあります。なぜ自分自身が作り出す卵子や卵巣を異物と判断してしまうのか、精子や受精卵を異物として排出しようとしてしまうのかについては、はっきりとしたことはわかっていません。 ■ 免疫因子について詳しくはコチラ>> 【引用・参考文献】*久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル.不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会*NPO法人日本不妊予防研究会編(2008):不妊予防のためのマニュアル.母子保健事業団
2023.06.02 -
#カラダと性の相談#不妊・不育の相談妊娠をさまたげる要因とその予防
不妊の原因はさまざまですが、日常生活等に問題があり、妊娠を遠ざけてしまっているケースも見られます。 日常生活における小さな配慮を積み重ね、心身の健康を維持・増進するよう努めることで、将来不妊になるリスクが確実に減ります。不妊を予防するような生活習慣を身につけることは、不妊症の治療とあわせて重要です。 加齢と不妊 晩婚・晩産化が進み、加齢による不妊が増えています。個人差はありますが、女性は30歳を超えると自然に妊娠する確率が徐々に低下し、35歳くらいから急速に低下します。その一方で子宮筋腫、子宮内膜症、子宮がん、乳がんなどの婦人科疾患にかかるリスクが高まり、妊娠をさまたげる要因は増えていきます。45歳を過ぎると体外受精や顕微授精を行っても妊娠する可能性は限りなく低くなります。また、妊娠したとしても35歳以上の高齢妊娠・出産では流産・死産、ダウン症などの胎児異常の確率が高くなるとともに、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、前置胎盤、陣痛異常、帝王切開率の増加など産科的リスクも高まります。 ■ 加齢と不妊について詳しくはコチラ>> 食生活と不妊 無理なダイエットをきっかけに、神経性食欲不振症(いわゆる拒食症)などの摂食障害となり、体重減少性無月経に陥るケースがあります。極端なやせ願望やボディイメージのゆがみから、無理なダイエットを行う女性が少なくありません。このようなダイエットが、女性の体、とくに生殖機能に与えるダメージは非常に大きいものがあります。 ■ 食生活と不妊について詳しくはコチラ>> 喫煙・アルコール・薬物と不妊 喫煙やアルコールの過剰摂取、薬物の乱用等も、不妊を引き起こす可能性を秘めています。 ■ 喫煙・アルコール・薬物と不妊について詳しくはコチラ>> 性感染症(STD)と不妊 性交を通じて感染する感染症(STD)は、増加の一途をたどっており、また感染の兆候があってもほとんど気づかれない程度ですので、感染が拡大しやすく、不妊の主要な原因の1つです。近年は初交年齢の低下にともなって10代女性の感染率が大きく上昇しており、将来の不妊につながることが憂慮されています。特に急増している「クラミジア感染症」は、炎症が卵管や子宮内膜、骨盤腹膜などに及んでいれば、卵管閉塞や骨盤内に癒着を招くことがあります。女性の場合は症状が乏しく、無自覚のうちに拡大して不妊の原因となります。男性は約半数に排尿痛などの自覚症状が起こります。精巣周辺に炎症が広がれば陰嚢が腫れて不妊の原因となります。また、淋菌によって起こる「淋菌感染症」は、精巣上体炎や子宮頸管炎などを引き起こし、これも男女双方にとって不妊の原因となります。感染時に、男性の約半数は排尿時の違和感や尿道からの黄白色の分泌物などの症状が見られますが、女性の多くは無症状のため、治療の機会を逃してしまいがちです。誰でも無防備な性交を行えば、妊娠するかもしれないことを知っています。しかし、性感染症(STD)に感染するリスクが高く、そのために、将来妊娠しなくなるかもしれないということを知りません。治療によって、感染症は治癒したとしても、すでに傷んでしまった卵管などは治りません。感染の予防には、コンドームの着用が有効です。また、パートナーも同時に治療し、再感染を防ぐことが重要です。 月経異常と不妊 月経は女性特有の生理現象ですが、月経周期、月経持続日数、月経血量、月経困難の症状などに留意する必要があります。基礎体温を測定して排卵の有無を確認し、月経周期に伴う身体的な変化をメモしておくと、将来、妊娠を考える際の有用な資料になります。月経血に凝血が混入する場合や、日常生活に支障をきたすほどの重い月経痛がある場合などは、子宮筋腫、子宮内膜症などの婦人科疾患が疑われます。迷わずに産婦人科医の診察を受けましょう。これらの疾患は不妊をまねきやすいものの、早期に発見して治療すれば、その分リスクは低くなります。また、生活環境の変化などにより、月経周期が不規則となったり無月経になったりすることは珍しくありませんが、異常が続く場合は放置せずに受診しましょう。3ヶ月以上放置していると回復がしにくくなり、将来の不妊の原因となる可能性が高まります。 卵子・精子の保存 悪性腫瘍の治療により、放射線治療・化学療法を行うことで、精巣・卵巣が高度に障害され、多くの患者が治療後に妊孕性を失います。一方でこのような治療の場合、原疾患の治癒率が高まれば高まるほど、将来子どもをもつ可能性を残したいという願いが強く聞かれるようになってきています。女性の妊孕性温存法には「受精卵の凍結」「卵子凍結」などがあります。患者の原疾患、パートナーの有無などによって、最適な方法は異なり、臨床実績・安全性にも差があります。男性の妊孕性温存法としては「精子の凍結保存法」が一般的です。精子凍結保存は50年以上の臨床実績があり、この方法の安全性は確立しているといえます。 ストレスへの対処 精神的なストレスにより自律神経のバランスが崩れると、ホルモンの分泌が低下します。自律神経と性ホルモンの中枢はともに視床下部にあることから、互いに影響を受けやすいためです。視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌に異常が起こると、女性の場合は排卵が抑制され、男子の場合は造精機能が低下するとの報告があります。不妊に悩むカップルは、周囲からの心ない言葉や、子どもができないことへの焦りなどからストレスをためがちです。また、不妊治療そのものがストレスになるなど、慢性的なストレス環境におかれているといえます。適度に体を動かし、バランスのとれた食事、十分な休養をとるとともに、生活を楽しむ気持ちを大切にし、趣味を楽しんだりして、心身をリラックスさせるよう工夫しましょう。しばらく治療を休んでみることも1つの方法です。また、気持ちを外部に開放するために、不妊カウンセリングやサポート・グループを活用するのも有効です。 セックスレスへの対応 セックスレスとは、病気や単身赴任などの特殊事情を除き、1ヶ月以上にわたって性交渉がなく、その後も同様の事態が続くと予想される場合をいい、不妊の原因の1つと捉えられます。 ■ セックスレスへの対応について詳しくはコチラ>> 社会的な予防対策 晩婚・晩産化という現象は、女性が働き続けることと、結婚して子どもを産み育てることとの両立が困難であるがゆえに、やむを得ず時期が遅れている傾向もあります。子どもを産みたくても産めない労働環境が原因で、結果的に加齢がもとでの不妊になってしまうような社会環境は改善していかなければなりません。 ■ 社会的な予防対策について詳しくはコチラ>> 【引用・参考文献】*久保春海他(2006):不妊相談のためのマニュアル.不妊に対する理解と支援のための普及事業 事業委員会*NPO法人日本不妊予防研究会編(2008):不妊予防のためのマニュアル.母子保健事業団*日本生殖医学会(2013):不妊症Q&A
2023.06.02